劇場公開日 1979年7月21日

  • 予告編を見る

「【91.5】エイリアン 映画レビュー」エイリアン honeyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 【91.5】エイリアン 映画レビュー

2025年9月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

エイリアン(1979) 批評
作品の完成度
『エイリアン』は、単なるSFホラー映画の枠を超えた、映画史に残る傑作。その完成度は極めて高く、各要素が有機的に結合し、観客を深淵な恐怖へと引きずり込む。緻密に計算された演出と、美術、音楽が一体となり、閉塞感と孤独感が支配する宇宙船ノストロモ号の内部を具現化。特に、エイリアンの造形がもたらす生理的嫌悪感は、観客の心に深く刻まれる。静寂と音響効果のコントラストを巧みに用いた恐怖の煽り方は、後世のホラー映画に多大な影響を与えた。冒頭からラストまで緊張感が途切れることなく持続し、観客は登場人物たちと共に極限状態を体験。宇宙空間における閉所恐怖症や、見えない敵への恐怖など、人間の根源的な不安を巧みに突いた点が、この作品を不朽のものとしている。
監督・演出・編集
監督リドリー・スコットの演出は、徹底したリアリズムに基づき、SF映画でありながら、泥臭く、説得力のある世界観を構築。照明、カメラワーク、美術のすべてが、ノストロモ号の古びた、使い古された雰囲気を醸し出すことに貢献。特に、エイリアンが姿を見せるまで、その影や音、部分的な姿のみを映し出すことで、恐怖を最大限に引き延ばす演出は秀逸。編集は、緩急を巧みに使い分け、静かなシーンでは緊張感を高め、パニックシーンでは視覚的な混乱を誘発。特に、エイリアンが乗組員を襲うシーンの短いカットの連続は、観客を震え上がらせる。
キャスティング・役者の演技
シガニー・ウィーバー(エレン・リプリー)
この作品の最大の功績の一つは、女性をヒーローとして描いた点。ウィーバーは、当初は平凡な航海士として登場するが、物語が進むにつれて、生き残るために強靭な意志を持つサバイバーへと変貌していく過程を繊細かつ力強く演じた。彼女の冷静な判断力と、極限状態における恐怖、そして最後の決意は、観客の共感を呼び、新時代のヒロイン像を確立。この演技は、彼女をハリウッドのトップスターへと押し上げた。
トム・スケリット(ダラス)
ノストロモ号の船長。冒頭では冷静沈着なリーダーとして振る舞うが、エイリアンとの遭遇を機に、そのリーダーシップが揺らぎ始める。スケリットは、責任感と無力感の間で揺れ動く人間の内面を、重厚な演技で表現。彼の退場シーンは、エイリアンという存在の恐ろしさを象徴的に示している。
ベロニカ・カートライト(ランバート)
ノストロモ号の航海士。恐怖を誰よりも強く感じ、パニックに陥りやすい性格として描かれる。カートライトは、常に怯え、感情をむき出しにするランバートを、説得力をもって演じた。彼女の恐怖は、観客の感情を代弁し、物語の緊張感をさらに高める役割を担った。
ハリー・ディーン・スタントン(ブレット)
機関士の一人。寡黙で、どこか皮肉屋なブレットを、スタントンは独特の存在感で演じ切った。彼の存在は、ノストロモ号の労働者階級の雰囲気を醸成し、物語にリアリズムをもたらした。エイリアンに最初に犠牲になる人物の一人であり、その死は観客に強烈な印象を残す。
イアン・ホルム(アッシュ)
科学主任。乗組員の中で唯一、エイリアンに対して冷静すぎる態度をとるアッシュを、ホルムは不気味なほどの落ち着きと知性をもって演じた。彼の正体が明らかになるシーンは、この作品の大きな驚きであり、SF的な要素を深く掘り下げている。
脚本・ストーリー
ダン・オバノンによる脚本は、シンプルな設定の中に、深い恐怖とサスペンスを内包。宇宙空間での貨物船の遭難という古典的なプロットに、未知の生命体との遭遇という要素を加え、それをホラーとして昇華させた。キャラクターの個性を際立たせ、登場人物たちの葛藤や人間関係が、物語に奥行きを与えている。特に、エイリアンの生態系や、会社の陰謀といった設定は、続編や後のSF作品に多大な影響を与えた。
映像・美術衣装
H・R・ギーガーがデザインしたエイリアンの造形は、この作品の核心。生物と機械が融合したような独特のフォルムは、グロテスクでありながらも美的。ノストロモ号の内部も、錆びついたパイプや剥き出しの配線など、未来の宇宙船というよりは、現代の大型貨物船のようなリアリティを追求。美術監督のレスリー・ディ・ボーモントとロジャー・クリスチャンによるデザインは、古く汚れた美学を確立。宇宙船の狭い通路や、薄暗い照明が、閉鎖的な空間の恐怖を増幅させた。
音楽
ジェリー・ゴールドスミスの音楽は、恐怖と不安を掻き立てる役割を担う。主題歌はなく、オーケストラとシンセサイザーを組み合わせたスコアが、不協和音や静寂を巧みに利用し、映像と一体となって観客を不安に陥れる。特に、エイリアンのテーマは、その不気味な存在感を音楽的に表現。
受賞・ノミネート
第52回アカデミー賞において、視覚効果賞を受賞。美術監督賞にもノミネート。この受賞は、H・R・ギーガーのデザインと、それを具現化したスタッフの功績を称えるもの。
作品 Alien
監督 リドリー・スコット
128×0.715 91.5
編集
主演 シガーニー・ウィーバーA9×3
助演 イアン・ホルム A9
脚本・ストーリー ダン・オバノン
A9×7
撮影・映像 デレク・バンリント S10
美術・衣装 S10
音楽 ジェリー・ゴールドスミス A9

honey