「愚かな人間たちが完璧な生命体に無惨にやられる姿に不思議な爽快感」エイリアン jin-inuさんの映画レビュー(感想・評価)
愚かな人間たちが完璧な生命体に無惨にやられる姿に不思議な爽快感
ギーガーの気色悪いデザインとか、シガニー・ウィーバーの主演作とか、AIやロボットが人間をコマとして扱うとか、1979年の公開当時としてはやはり時代を先取りしている感がありました。
ただ、本作の残念な点は盛り上がりが最初にあってあとはダラダラ盛り下がっていく構成にあります。
でかくて暗い宇宙船の中で、一匹のエイリアンと6人の乗組員たちが命をかけたかくれんぼをするわけですが、一番びっくりかつイヤーな殺され方をするのが一番最初の人です。その後の犠牲者はフツーの死に様ですので観ていてそんなにアガりません。ああ、やられちゃった、くらいです。最初がピークで、あとはどうしてもダラダラかくれんぼしてるようにしか見えません。しかも船内は暗いし広いし散らかってるしライトはチカチカしてるしで、見えづらい上に火炎放射器とか電気ショックとか生体反応機なんてちゃちな武器持ってても勝てっこありません。ハラハラ要素は乏しい作りになってしまいました。美術に全振りしててストーリーは二の次です。
アンドロイドのアッシュを破壊したあとに無理やり再起動させますが、大した意味はありません。
オペのシーンでサージカルマスクじゃ顔が見えないので酸素マスクで代用って、安っぽい。
7人全員で未知の小惑星へ向かいますが、事故ったら全滅です。2,3人は母船に残ったほうがよかったのでは。
脱出前に冷却剤取ってきてと頼まれた二人は犬死にです。
リプリーが飼い猫救出に必死になるのもなんだか滑稽。
なにしろ登場人物たちの行動一つ一つが場当たり的で残念。ことごとく選択を誤っていきます。そんな愚かな人間たちが完璧な生命体に無惨にやられる姿に不思議な爽快感を覚えてしまいました。そらしょうがないよ、としか言えませんでした。