「体罰を容認している自分と否定している自分に問う2時間」スパルタの海 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
体罰を容認している自分と否定している自分に問う2時間
『3年B組金八先生/第2部』etc.深刻化する非行問題へのメッセージ作品の決定版として注目されていたが、生徒の死亡事故が相次いで発生。
日常の暴力による過失致死として戸塚宏校長を中心に、幹部が逮捕されたのが原因で公開を中止し、永久封印された曰く付きの作品である。
(詳しい経緯は、天野ミチヒロ著:放送禁止大全を読むことを薦めたい)
情緒不安定で見境なく暴れまわる問題児達に真正面から向き合い、躊躇せず喰らわす鉄拳制裁は、ゆとり教育への強烈なアンチテーゼのようで、観る者を圧倒させる。
この頃の伊東四朗は、伝説のコントキャラ・ベンジャミン伊東時代と『伊東家の食卓』時代との中間地点。
『おしん』の親父夜明け前に、笑いなしで突っ走る極端な振り子の振れ幅は改めて凄いと云わざるを得ない。
頻発する未成年犯罪の凄惨なニュースが途絶えない現在、劇中に繰り広げられる体罰の嵐を容認している自分と、否定している自分に両方気付く。
自ら悪者となって、憎悪の対象になる事で生徒達の反骨精神を呼び覚ますのは解るが、必ずしもハングリーな生徒ばかりではない。
昔から、
《人間、死ぬ気になれば、何だってできる》
って云うけど、
《こんな辛い思いするなら死んだ方がマシだ》
っとも云う。
あいにく人間の性根は圧倒的に後者である。
弱者は海に蹴落として目を覚ませば良いってワケではないハズである。
いくら問題児やからといって檻にブチ込むのは明らかに筋違いだ。
早朝ランニングで、コーチがタバコ吸いながら、
「たるんでんじゃない!!」
って竹刀振り回したけど、食わえタバコのアンタも充分たるんどるやないかと思ってしまう。
しかし、奇麗事を並べてみても、劇中で親達が藁をもすがる想いで懇願する実態を垣間見ると、教育の難しさを痛感する。
やっぱりシゴキの必要性を一部容認する了見が我が心に居座っていやがる。
ヤなざわつきである。
いつにも増して支離滅裂な文章やったけど、まぁいいや…。
では最後に短歌を一首
『教(狂)育に 揉まれし狼(イヌ)へ 贈るムチ 甘えを断ちて 荒波に問う』
by全竜