劇場公開日 2012年5月26日

ガール : インタビュー

2012年5月23日更新
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新たな一歩を踏み出した麻生久美子、“ガール”から母へ

麻生久美子がキャリアウーマン!? 失礼ながらまったく想像ができなかった。本人も「そういうイメージがないことはよく分かっている」と自認するが、自身とはかけ離れたキャラクターを演じられるのも女優のだいご味だ。「ガール」の武田聖子がまさにそういう役どころで、年下の男性の部下にはき然とした態度を貫く一方、家庭では自分より給料の安い夫に気を使う、強さともろさを併せ持つ女性を好演。またひとつ、新しい演技の引き出しを手に入れたようだ。(取材・文/鈴木元、写真/堀弥生)

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持ち前の明るさと笑顔を封印し、常に眉間にしわを寄せている麻生を初めて見た。34歳で管理職に抜てきされた聖子は、それを認めようとしない年下の部下・今井(要潤)とことごとく対立し怒りをあらわにする。今まで演じたことがない設定だけに、オファーに対しては喜びと不安が同居していたという。

「私がキャリアウーマンなんて、すごくビックリじゃないですか? うれしかったですけれど、やるとなると難しい役だということは想像できたんです。私はちょっとフワッとしているし声は甘ったるいし、ちょっと気を抜くと悪い意味でかわいい感じになっちゃうので。それは自覚しているから怖かったし、チャレンジでしたね」

29~36歳の親友4人がそれぞれの立場で仕事や恋に悩み、もがきながら生きる糧を見いだしていく多角的な視点で描かれる人間ドラマ。直木賞作家・奥田英朗氏の40万部を超える短編集が原作で、脚本には同世代として共感する部分が多かった。

「面白かったですよ。原作者の方が男性なのに、どうして女性の考えていることが分かるんだろうという内容でした。30代の女性がメインのお話は自分がちょうどそれくらいの年齢で、こういう作品があったら興味を持って見てみたいと思いましたね」

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撮影は4人それぞれのエピソードに分けられたため、麻生のパートもかなり集中的に行われた。ほとんどのカットで深川栄洋監督によるマンツーマンの演技指導が繰り返され、緊張感あふれる現場だったと振り返る。

「けっこう気を張っていましたね。聖子の感情は想像しながら理解はできるんですけれど、息遣いで表現することなどを監督に細かく教えてもらいました。自宅のシーン以外では呼吸するのが苦しい感じでと言われていたので、息を吸ってばかりいて吐けないような。けっこう苦しかった(苦笑)」

深川監督の演出は、現役時代のノムさんこと野村克也氏よろしく“ささやき戦術”ともいえる独特のもの。それが1シーン1カットずつとなれば相当つらかっただろうとも思えるが、麻生にとっては望むところだったようだ。

「すごくこだわって撮られる監督で、1シーンずつ私にしか聞こえないような小さい声でぼそぼそっとしゃべってくれるんです(笑)。それが新鮮で、難しかったけれど監督とのお仕事はすごく楽しかった。さらっとあっさり終わるよりも、細かい演出を受けると役に対して考える時間が増えますし、悩むから結果的にはプラスになった気がします」

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インタビュー2 ~新たな一歩を踏み出した麻生久美子、“ガール”から母へ(2/2)
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