劇場公開日 2011年12月3日

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ピザボーイ 史上最凶のご注文 : 映画評論・批評

2011年11月22日更新

2011年12月3日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにてロードショー

おバカな犯罪喜劇に渦巻く人生の皮肉、そのおかしさと不気味さ

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いくらスゴ腕の犯罪者が緻密に練った計画だろうと、映画の中の完全犯罪は必ず破綻する。行く手には裏切りなどの思わぬ誤算が待ち受け、主人公はその想定外の事態にいかに対応するか試される。そこに生じる危機一髪のドラマとサスペンスが犯罪映画の醍醐味だ。

ところが「ゾンビランド」の監督&主演コンビが放ったこの犯罪“喜劇”は、まるっきり逆転の発想でプロットが組み立てられている。30分の配達時間も守れない落ちこぼれピザボーイが、無理やり命じられた銀行強盗を遂行できる根拠はどこにもない。言わば最初から失敗を運命づけられた犯罪だ。しかしこの突然降ってわいた想定外の危機に、主人公は人生最大の開き直りを見せ、カーチェイス、爆破、火炎放射の見せ場を連発する。成功確率99%の完全犯罪が崩壊することもあれば、1%から出発する杜撰なダメ犯罪が警察を翻弄することもある。本作の脱力感を誘う笑いの裏には、そんな人間や人生の皮肉なおかしさが潜んでいる。「ゾンビランド」の終末世界を生き抜いたのも、まさにヒーローらしからぬへなちょこ大学生とうら若き姉妹だった。

その一方でピザボーイが爆弾チョッキを装着されて犯罪を強要される理不尽な設定は、実際にあった爆弾事件(被害者は哀れにもTVの生中継中に爆死した!)を思い起こさせるし、まるで近所に買い物に行くようなお気軽さで凶悪犯罪を思いつくグータラな白人2人組も本当にいそうでちょっぴり不気味だ。“スカッと爽快”とはひと味違う奇妙なテイストのコメディである。

高橋諭治

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