「言葉で世界は変えられるか」もうひとりのシェイクスピア 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
言葉で世界は変えられるか
本作冒頭に「言葉で世界は変えられる」というセリフが出てくるのだが…。
言葉…広くとらえれば物語…それには映画も含まれると思う。
「映画で世界は変えられる」なんつう重いテーマをエメリッヒは持ち出してきたのか。
そんな自分に跳ね返ってくるブーメラン投げて大丈夫なのか?
ガチなテーマに、ふてぶてしく、いやココロザシ高く挑んだエメリッヒ会心の一作だと思う。
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シェイクスピアの正体。
それに様々なドラマが絡んでくる。権力争い、陰謀、親子関係、恋愛関係…。
そんなテンコ盛りなお話を分かりやすく手際良く描いていく。
どんでん返しもあり、ストーリーを追っていくだけでも充分楽しい。
当時の街並みや貴族達の意匠、舞台装置など映像的にも美しく観ていて飽きない。
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テンコ盛りなお話の中でもやはり核となるのは、
「言葉を書く人」「物語を作る人」たちの苦悩だろうか。
禁止されても愚か者と罵られても、書くことを止められなかったシェイクスピア。
シェイクスピアの圧倒的な才能に深く嫉妬し、彼には敵わないことを承知しながらも、自分も言葉を書き続けた劇作家のベン・ジョンソン。
二人の最後のシーン、セリフがいい。
シェイクスピアがなぜベンに戯曲を託したのか。
「言葉を書く人」同士の強い連帯と敬意が溢れ出ていて、胸に迫る。
二人の健気さに、この物語を作ったエメリッヒの健気さが重なって、なんだか込み上げてくるものがあった。
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「言葉で世界が変えられる」
世界とは、社会や歴史といった大きいものを指すと同時に、個人の心情・精神世界といったものも指していると思う。
そういう意味ではこの映画、私の心をしっかり揺さぶって変えてくれたと思う。
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