劇場公開日 2012年12月22日

「シナリオとスタッフに拍手」もうひとりのシェイクスピア shikahikoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5シナリオとスタッフに拍手

2013年1月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

知的

16世紀、エリザベス一世統治下のロンドン。宰相として権力を振るい、王位継承者にスコットランド王ジェームスを据えようと企むウィリアム・セシル卿は芝居を忌み嫌い、それが民衆にもたらす力を恐れて弾圧する。オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアは、セシルの陰謀に反抗するように自作の戯曲を劇作家のジョンソンに託し匿名で上演させる。芝居は喝采で民衆に迎えられ、民衆は作者の登場を要求する。そこへ自分が作者だと名乗り出たのは、エドワードが自身の替え玉として選んだジョンソンではなく、その劇に出演していた役者のシェイクスピアだった。
ローランド・エメリッヒ監督が、18世紀に始まったシェイクスピア別人説論争の中で有力とされている、第17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアが真の作者であったという説に立ち、なぜ彼がその真実を隠さねばならなかったのかを主題にしながら、愛と陰謀渦巻く宮廷を描いた歴史ミステリー。
しかしこの作品は、彼が真の作者であったことを証明しようとするものではなく、彼が作者であったのならこんな物語だったのではなかろうかという、あくまでも「物語」であり、その真実味溢れる重層的で重厚なシナリオとともに、16世紀のにおいまでも伝わってきそうなほど現実味を持ってロンドンを再現してくれた「特撮」と美術や撮影スタッフの素晴らしさに拍手です。

shikahiko