「北野監督も続編のジンクス破れず・・・。」アウトレイジ ビヨンド sigeさんの映画レビュー(感想・評価)
北野監督も続編のジンクス破れず・・・。
北野作品は昔から好きで、
「Dalls」までの静かなトーンも好きだし、
「座頭市」や前作のようなエンターテインメントに舵をきった作品も好きです。
特に前作は前に私が書いたレビューにもあるとおり、
“極道ピタゴラスィッチ”が面白くて
コメディ映画として最高の出来だと思いました。
決して前作のバイオレンスが好きとかではなく
話として単純に面白かったし、
大友組に来た木村へ“ケジメ”をつけるよう迫るところは
最高の漫才シーンです。
で、今回震災の影響で製作を1年延ばし、
やっと公開となった本作。
感想は・・・
・・・あれ?監督が言うほどエンターテインメントしてないぞ・・・。
①大友が出てくるまでが長い・・・。
中尾彬の下りいらなくないか?
編集でカットして短くつめていったというが、
花菱会も、山王会を配下に入れたいのか、
先代の契りを優先させたいのか、
態度が二転三転してまどろっこしい。
前作の國村隼は滑稽で面白かったけど、
それを組全体でやられると、観客が混乱するだけだと思うんですけど・・・。
②会話が言うほどリズム感がない・・・。
片岡の取調べシーンや“今日は会長はいらっしゃいますか”のシーンは笑ったけど
前作の木村の名シーン等には及ばない。
会話劇に重点を置くなら
“余計な一言”からどんどん話があらぬ方向に転がっていくような展開を期待したのに
会話劇にパワーが足りない。
③ビジュアルや音楽等に魅力が・・・。
音楽好としてはテーマ曲はどの作品も重要なポイント。
前作の鈴木慶一氏のテーマ曲に乗せて、
スタッフロールを香港映画のような“漢字+ローマ字を赤字表記”で見せ
更にタイトルまでの黒塗りの車の美しさ、
タイトルが出るタイミング。完璧なシーンでした。
それが本作はどうでしょう。
テーマ曲もなんだかよく分からず。ひたすらモヤモヤしている。
第一にポスターのデザインも酷い。
前作の主要キャスト4人に加え、
脇役キャストの顔がそれぞれ配され、
みた瞬間、“かっけ~”と思ったのに、
今回はキャストの怒鳴っていたり、メンチきっている顔ををただ羅列しているだけ。
とても“画作り”を大切にしてきた監督とは思えない。
④前作ほどキャストに愛がない!?
前作は一人ひとりが印象に残る役でよかった。
今作はキャスト発表なった時から嫌な予感はしていました。
今見ても椎名桔平がいかに重要なポジションだったかが分かります。
前作がバイオレンスばかり注目されたため、バイオレンスを抑えたということが
逆に各キャラの死に様を薄くしてしまったような気がしてならないです。
一番?なキャスティングの高橋克典なんて、いる意味あったのかなんて思いますし・・・。
今作についてバイオレンスが薄まって見やすくなった等
褒めている方も多く、最後は好みの問題なのですが、
私は加藤が殺されたあたりから“もういいよ、早く終わろうよ”という気になりました。
まぁ、最後の終わり方は「仁義なき戦い」のラストを思い出させて良かったですし、
唯一“北野作品を見たなぁ”と思いましたけど・・・。
期待が大きかっただけに、今年「プロメテウス」に続く、がっかり映画でした。
ちなみに、レイトショーで見たんですが、
客層がいつもと違ってちょっとびっくり。
劇中の桐谷健太みたいな人がいっぱいいて、
前の席に人がいないこととをいいことに
靴脱いで前の席の背もたれに足を投げ出すは、
劇場が暗転してワーナーのロゴが出るまで電話で話しているは、
ちょっと神経を疑いたくなるような
お客さんがいっぱいいました(笑)