「海の美しさには魅了されたが…」グラン・ブルー グレート・ブルー完全版 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0海の美しさには魅了されたが…

2023年9月13日
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「ニキータ」「レオン」の
リュック・ベッソン監督の有名な作品だが、
何故かこれまで観ようとはしてこなかった。
それは、事前情報で無呼吸潜水の深度を競う
ダイバーの話と聞いており、
また、美しい海の描写が話題だったので、
何かドラマ性の薄い映画なのかなとの
先入観があったためだった。

今回、TV放映を機会に初鑑賞してみたら、
確かに映像は美しく、ドラマ性もあった。
しかし、エンゾが最後に亡くなるであろう
結末が容易に想像出来たり、
何かと漫画チックな展開や、
長い上映時間の中での
海底油田調査参加のエピソードが
必要あるのだろうか等々の冗長さが
マイナスに感じる。

また、ラストシーンにも疑問が残る。
ジャックはイルカによって海面まで導かれた
との解釈は可能かも知れない。
しかし、
自らイルカに寄っていっている様子からは
常識的に判断すれば、
ジャックはエンゾもいる海の世界に
向かったとしか想像出来ない。

キツい言い方にはなるが、
監督がスキューバに想い入れがあり、
ジャックのアイデンティティが
海の世界にある前提だとしても、
愛する女性と子供への責任を放棄してまでの
海との一体化設定は、
海を本当に愛する姿勢の表現としては
間違っているように、私には感じる。

この映画は海の美しさに魅了されるべく
創られた作品で、
理屈目線で観るものでは
ないのかも知れないが、
私の、リアリティーのあるストーリー展開と
ヒューマニズムに裏打ちされた社会テーマを
重視する鑑賞姿勢とは少し開きのあり、
私の理解が及ぶ作品では無かった。

KENZO一級建築士事務所