「明らかになるのは人の心」逆転裁判 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
明らかになるのは人の心
原作ゲームをプレイして結末を知っている身なので、
映画として評価を下すのが難しいですが……。
まずは原作との比較という視点から。
スゴい風貌と髪型(笑)のキャラ達がまんま登場するのに、
色彩を抑え、話の雰囲気も若干重めにしてあるので、
(霊媒なんてものを実写で見せるならオカルト風味を加えるしか無いよね)
実写であることに驚くほど違和感がない。
特に主人公役の成宮寛貴は完ペキじゃないかしら?
「異議あり!」「待った!」の名調子もしっくり来てます。
一部の犯人の設定が変わったり、物語の順序が多少入れ換わってはいるが、
原作を映画内に収める為の改変なので気にはならない。
あと霊媒士の卵・マヨイの設定は、原作ではもっと天真爛漫な感じなんだが、
映画の上映時間では彼女の暗い側面ばかりをピックアップせざるを得ないのだから、
あれくらい影のある雰囲気の方がしっくり来るのかもね。
つう訳で、原作ゲームの実写化という点ではかなり良く出来ているかと。
では、映画としては?
ミステリー映画では
・推理の材料は残らず観客に提示する
・観客に推理させる余地を与える
・推理を観客に納得させる
といった点が大事だと個人的に思うのだが、
本作はこれらに関して少々不満が残る出来かな。
また、“序審裁判”という特殊な設定とはいえ、
裁判長がすぐさま判決を下そうとする所や
オウムに尋問するという冗談スレスレの流れ、
別件の事件の真相を裁判で暴こうとする展開など、
原作を知らない人はかなりムリがあると感じたのではと、ちょっと心配。
話を詰め込み過ぎた感も拭えないかなあ。
けれど、原作を知る・知らないの関係ナシに、
この映画には心に響く部分が確かに存在していると思う。
勝ち目の無い裁判を引き受けた弁護士がいた。
誰も信じてくれない事の悔しさを彼は知っていた。
あんなに空っぽな「愛してるわ」の声を支えにし続けた男がいた。
背筋がゾッとするほどの愛情と悲しみの深さに涙が出た。
嘘をついた幽霊がいた。
死してもなお、守りたい人がいた。
どんなにエキセントリックでハチャメチャな設定でも、
そこに“人間”がちゃんと存在してくれていればいい。
逆に、いくら演出や脚本に凝った映画だとしても、
愛の無い映画なんて最低だ。
僕はこの映画、気に入ってます。
『ヤッターマン』や『忍たま乱太郎』よりは皆にオススメできるかな(笑)。
<2012/2/12鑑賞>