麒麟の翼 劇場版・新参者のレビュー・感想・評価
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サスペンス好きの人はぜひ
日本橋で起こった刺殺事件から物語が始まる。
3年前の水泳部で起こったある事件が明るみになることで、物語は全く違う角度から進展していく。まさか息子がからんだ事件だったとは意外すぎた。
矢島冬樹は全く事件とは関係ないのに、命を落とし、殺人容疑までかけられ、あまりにも不憫すぎる。ガッキーは「正欲」といい幸薄い役もはまるね。
まだダイヤの原石の頃の俳優さんを見るのは、興味深かった。
どうでもいいけど、「東京のハナコさん」って名前ダサすぎん?東野圭吾の本でもそうなの?
ドラマは観ていませんでしたが
何となくアマプラで鑑賞しましたが、ラストが腑に落ちなかったです。あの犯人設定は無理があると思います。被害者に対して恨みもない精神疾患もない普通の高校生があの行動を取るとは思えませんでした。自分が高校生の時を振り返っても有り得ないです。
悲しい話
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会社で地位のある中井が殺され、現場から逃げた男も車にひかれ死亡。
男は中井の会社を先日首になったばかりだったため、犯人と見られた。
実は中井の息子の中学の水泳部で後輩がおぼれる事故があった。
中井の息子らのシゴキが原因だったが、被害者に脳障害が残りバレなかった。
それから何年もが経ったが、中井は独自にその事故を調べていた。
そしてついに共犯でもある息子の同級生から話を聞き、全てを知るに到った。
その直後、怖くなった同級生が保身のために発作的に中井を刺したのだった。
そして車にひかれた男は単なるコソドロだった(場)
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TVシリーズを見てたんで、当然見た。いやあ、懐かしかったなあ。
でも確かTVでの阿部は人の嘘を見抜く天才とかの触れ込みやったが、
今回は特にそれがクローズアップされず、ただの熱心な刑事だった(場)
中井は刺された後、日本橋にある麒麟像まで行って死ぬ。
それが死んだ生徒への償いであり、息子へのメッセージだったとのこと。
うーん、それはちと無理があると思うなあ・・・。
だって何とかそこまで行けるくらいの元気があるんやで?
なら何とか生き延びる方法を考える方が息子らのためになるやろ?(場)
あと、自分は世の中を甘く見過ぎかと問うた新垣に、
阿部の返した言葉がなかなか良かった。
この世に光を見失って絶望してるよりはずっと良いとのこと。
おれも40歳手前でもタイガイ世の中甘く見てもてるから、励まされた(場)
しかし、見てる途中で屁が止まらず、しかもめちゃ臭かった。
そのために嫁が少し機嫌が悪くなってしまった(場)
失ってから、深く知る
ドラマシリーズをTVerで一気見後、鑑賞。
ドラマシリーズの1話1話関係者を掘り下げていく冗長さが無く、ぎゅっと凝縮されて見応えありました。
加賀恭一郎の真相究明による事件関係者の心のデトックスは健在。
生前の日常では通じなかった気持ちや心を、失ってから深く知るって悲しい。
でも知れただけ、残された者は前へ進めるよね。
そんな加賀も自分の父親とは分かり合おうとせずに、看護師に死者としか向き合って無いって諭されてるのが面白い。
身内でも理解し合えて無いってのが、身に染みます。
加賀恭一郎のような刑事が1人でも増えてくれたら、冤罪も減るのかな?、知らんけど。
冬樹が青柳の鞄を盗んだ件は、
労災隠しの派遣切りの情状酌量解釈や、子供の為にって美化されてもなぁ。
そこだけ、どうにかならなかったかね。
山崎賢人、菅田将暉は若過ぎて初見で分からなかった。
松坂桃李含めて、今観ると中々のキャスティング。
逆にセカンドクレジットのガッキーってこの映画では、そこまでの存在では無いよな?
吉永の事件に関わった先生や生徒は、どう裁かれるのか?どう償っていくのか?
そこも気になりました。
悲しさが尾を引いてる
冤罪を晴らして、被害者の無念も明らかになって、すっきりするはずなのに、悲しい気持ちが残ってしまう
でも、いい作品だ
劇団ひとりに説教するところは爽快だったな
阿部寛と溝端淳平のやりとりも面白い
でも、なぜ山崎賢人が中井貴一を刺したのかイマイチわからない。友達が警察に突き出されると思ったから?
あざとい作風&テンポも悪くて苦行!!
監督は違いますが、同じシリーズの「祈りの幕が下りる時」(2018)と同じく、弱者と東京日本橋を扱った、あざとい作風でした。前半の労災隠しと後半の水泳部の話を組み合わせるのは興味を無くす一方で、テンポも悪く尺が長すぎて辛いです。黒木メイサとガッキーは、それぞれ役柄に合わないように感じました。
不幸の連鎖
犯人は青柳武明(中井貴一)の部下である小竹(鶴見辰吾)だ!と推測したのが全て外れてしまった。しかし労災隠しは小竹の指示だよな・・・明らかにされなかったけど。
東野圭吾の作品は当たり外れがあるけど、これは“当たり”の方だと思う。当たりの要因としては社会問題を大きく取り上げている部分。ここでは容疑者である八島(三浦貴大・三浦友和と百恵の息子)が派遣先の工場において1週間休む怪我をしたことが発端になり、効率のために安全装置を切っていたことと労災申請しなかったことが取り上げられている。体裁のための労災隠しと、派遣切りだ。それを訴えることもできず、左腕にしびれが残ったまま、失業状態が続いた八島。東北の養護施設で育ち、そこで一緒だった中原香織(新垣)が同棲していたのだが、彼の無実を信じていた香織。しかし、被疑者となり、意識不明の重体の八島。警察では被疑者をそのまま送検しようと考えていたのだが、加賀(安部)だけは腑に落ちなかった。
青柳の家族は被害者であるにも拘わらず、労災隠しという問題でマスコミのバッシングを受けたりして、長女の遙香(竹富聖花)が自殺未遂をする。一方の長男・悠人(松坂桃李)は何かを隠しているようで、そこを加賀が追及する。3年前に水泳を止めたことを父に咎められた事実。そして、そこには中学校プールでの水難事故があったところまで突き止める。青柳が死ぬ直前に麒麟像まで歩いていった事実と、日本橋七福神巡りなど家族も知らなかったこと。謎がいっぱいの展開だったが、水難事故の被害者・吉永(菅田将暉)が未だに寝たきりの状態で、彼の母親がしていたお参りを青柳が行っていたことに結びつく・・・
水泳部の3年生が下級生だった吉永の失敗を責めて深夜のプールで特訓と称するイジメ。その事故を顧問・糸川(劇団ひとり)が隠蔽。さらに、父親の事件と関係があるんじゃないかと悠人が当時の3年生に呼びかけると、そのうちの一人杉野(山崎賢人)が地下鉄ホームで飛び降り自殺・・・寸でのところを松宮(溝端)が助けた。実は、杉野が青柳を刺していたことが発覚するというストーリー。
一つの事件・・・というより、事故により、色んな人が不幸になってしまう。真実を語る勇気さえあれば、被害者は吉永だけで済んだはず。そうした事件の謎解きよりも、青柳の息子を思いやる切なさが伝わってくる。まともに向かい合って語ることなく、息子のブログに書かれた千羽鶴を父親が代わりに引き継いだ事実。その時は息子のせいで吉永が障害者になったとは思わず、息子がひたすら回復を願っていたことを引き継いだだけだ。そしてそれを杉野に確かめたとき、杉野は自分のことも発覚すると恐れ、刺したまで。その事件直後、八島が青柳の所持品を奪った。この時の八島の心境を考えると、腑に落ちないのだが、そこまでするほど金に困ってたということか・・・
想いに肉体は要らない
岡田まさきの姿は滑稽だった。水泳部員の先輩からしごきと称した猛特訓によって植物人間になってしまった。たかがリレーで失格になったぐらいでそこまでやることはないかと思う。もちろん、本人たちもまさかこんなことになるとは思ってもなかったはずだ。これがきっかけで水泳を辞めた松坂桃李。せめてもの償いをということで「東京のハナコさん」というタイトルで水天宮の七福神巡りをした写真を毎月ブログにアップしていた。しかし、ある日このブログのことを父親に見つかってしまう。事件の匂いを嗅ぎつけた父親は息子と同じ水泳部員であり事件の当事者である人間に話を聞き、息子を警察に差し出そうという思いを告げる。それを知った息子の友人は別れたあと、後をつけて衝動的に背後から刺してしまった。一方で別の当初犯人と疑われていた男は一体なんだったのか。昔勤めていた派遣の仕事中に事故をしてそのことが原因で解雇され、労災もおりず、逆恨みから製造本部長である刺された男を殺した犯人とされていた。あれは一種の真犯人隠しのカモフラージユに使われただけなのか。
命をかけて伝えたかったメッセージ
"新参者(劇場版)" シリーズ第1作。
レンタルDVDで3回目の鑑賞。
原作は既読です。
連続ドラマ、TVスペシャルを経ての映画化。最近は落ち着いて来た感あり。高視聴率ドラマの映画化の風潮は正直微妙だなと感じる時もありますが、つくづく上手いやり方です。
身近にいたのに、何故分かってあげられなかったのか、何故もっと知ろうとしなかったのか。事件をきっかけに浮かび上がる人々の想いが交錯していく展開が堪らなく切ない。
原作を読んでダダ泣きした人間なので、その映画化である本作でも涙が止まりませんでした。何回観ても泣いてしまう。
日本のゼロ地点である日本橋、そこから始まる物語がエモーショナルでした。麒麟の翼の意味も胸に迫って来ました。
被害者(中井貴一)が命をかけて、ある人物に伝えたかったメッセージに胸を打たれました。誰かを想う力ってすごい。
[余談]
改めて観ると水泳部の面子が超豪華!
今をときめく若手俳優が一堂に会していて驚きでした。
[以降の鑑賞記録]
2023/08/10:Netflix
※修正(2023/08/10)
テレビシリーズより面白かった
父親と息子の微妙な関係、派遣切りの問題、格差社会、弱者叩き等の社会問題を日本橋の麒麟の翼から全部繋げてストーリーを無理なく作った東野圭吾天才っす。
キャスティングも良かった。
特に中井貴一良かった。
ただ唯一、劇団ひとりは怒られる役には向いてない。ネタとかぶって笑えてくるのが残念。
良かった!けど。
とても良かった!
みなさんの演技は、文句なし。
あの高校生(中学生)3人が、今見れば思えば豪華。
今、売れっ子ですよね。
事件の真相も、良かった。
少し感動というか、切ないというか。
最後に、阿部寛さんがひとりさんに向かって言った言葉が胸にしみました。
でも、少し詰め込みすぎ、かな。
映画の尺では収まりきらない部分があり、あれ?と思うことが時々ありました。
千羽鶴の「なんで黄色からなんだ?」という阿部寛さんの台詞、解決せず、だったと思います。
事件の真相に関係ないんかい!っていう。
私が聞き逃しただけ?
ドラマでゆっくり見たかったかな。
しょうもない
けっこういい評判も聞いてたから、みたいなーと思ってたんだけど、結果しょうもなかった。
映画にする意味ない感じ。
犯人は最後まで予測できないけど、それって脚本がうまいから予測できないんじゃなくて、
ふつうあり得ないから予想できないだけ。
中井貴一が犯人に会いに行くのもイマイチ理解できないし、犯人が自分でしゃべっておいて殺すのも意味不明。
ガッキーの存在も?だし、単にかわいい子を出したかっただけか??
ガッキー彼がかばん盗んだ理由もつまり簡単に言うと、「お金がほしいから盗った」ということ?
全てが安っぽい。映像も大画面で見るべきものなし。
あ、中井貴一だけはやっぱりよかった。たぶん純粋にファンなのだと思う。
やってしまったことへの責任
総合65点 ( ストーリー:65点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
犯罪の謎解きではなく、犯罪の裏にある複雑な人間模様を紐解く。実際、殺人事件の跡を追いかけている前半を観ても、事件の断片を見せても事件の全容をほのめかすような手掛かりはなかったように思う。そもそも真犯人がなかなか登場すらしない。だから事件がどうなっているのかは途中まではわからないし、それを考えようとするのは無駄だし肩透かしをくう。単に犯人を割り出して逮捕して終わりなのではなく、やってしまったことに対する罪の意識と、起きてしまったことへの人生の影響を考えさせる内容だった。
ただ、大企業と貧困層の話と本筋があまり関係が深くなかったりして、物語の展開が散漫になってしまっているように思う。後になって思うと、あれだけ前半でそのことに時間使っていたのにその多くは無駄だったじゃないかと感じた。後半になって本筋が見えてくると盛り返してきたが、それまでの流れがあまり良くなかったかな。出演者はなかなかでした。心を通わせない息子のために自分なりに動く中井貴一のお父さんはせつない。
がっかりな展開
テレビドラマ時に
面白かったので
期待してみたんですが
最後は
無理矢理な展開で
がっかりしました。
ただし、
途中まではおもしろかったです。
他の方もいってましたが
音楽も良くないです
すべて子どもたちの将来のためです
映画「麒麟の翼 劇場版・新参者」(土井裕泰監督)から。
観終わって、帰宅後に劇場内で書き留めたメモを整理していたら、
「あっ、そうか」と、今更ながら気付いたことがある。
どうしても「謎解き」「犯人探し」に夢中になってしまいがちな
ミステリー作品の中から、原作者が伝えたいことを探すことも、
映画鑑賞や読書の楽しみ方の1つとなっている。
今回は、劇団ひとりさんが演じる「中学校水泳部の先生」が発した
「すべて子どもたちの将来のためです」
子どもたちがある事件を起こす、しかし彼らの将来を考え事実を隠す。
受験前の中学3年生に対して、よく使われる美談のようだが、
この行為こそ、彼らに「悪いことをしても隠せばいい」という
メッセージを刷り込むことになる、と忠告している。
阿部寛さん扮する主人公の刑事・加賀恭一郎が、先生に問い掛け、呟く。
「数学の先生でしたよね。
子どもたちが正しい公式を学べるよう指導してあげてください」
この台詞が私のアンテナに引っ掛かってメモしておいたら、
その謎解きが、全体のメッセージへと拡大していった。
「すべて子どもたちの将来のためです」と先生、
「それで将来がどうなった?」と加賀刑事。
さらに「あんたが間違ったことを教えたから・・・」と詰め寄るシーン。
その間違った教えこそ、今回の事件につながった、そう言う意味で
「これがあんたの作った将来だ、あんたに人を教育する資格はない」と
言い切る言葉には力があった。
「間違ったことや悪いことをしたら、隠さない、逃げないで対処する、
それこそが『勇気』というものだ」と、「生きていくのに必要な公式」を、
先生は子どもたちに教えるべき、それが先生の役目だよ、と
私なりに解釈してみた。
今回の事件、影の犯人は、先生だったのかもしれないな。
おせっかいの大切さ。
原作は(ほとんど)読んでいないのだが^^;
TVシリーズの大ファンで、すべて観ていた。
スペシャル版もかなり良かったので、劇場版も期待してた。
加賀恭一郎=阿部ちゃんがすっかり板について、
相棒の松宮脩平=溝端コンビも健在、今回は笑いも織り交ぜ
ドラマとしても、なかなか巧く纏まっていたと思う。
ゲストは中井貴一。
最近、彼のドラマばかりを観ている気がするため^^;
あっちで貴一、こっちで貴一、今度は映画で貴一、なんだけど
さすがに巧いので、彼の演技にはまったく飽きがこない。
今回は冒頭で殺されてしまう…という役ながら、ほぼ主人公、
彼がどういう経緯でそういうことになったのかが語られていく。
ミステリー推理が絡んだ話なのであまり言えないけど、
親子をはじめとする大人と子供、深く切り込めば父親と息子が
縦軸に、相手を思う気持ちが横軸にあり、最も難しい年頃の、
おそらくは過去に誰もが経験したかもしれないあの頃の自分と
向き合うような構成になっている。子供時代、どうしたらいいか
分からない時は大人の人に聞きなさい。とよく言われたものだ。
お父さんやお母さんなら、学校の先生なら、絶対に正しい。と
(っていうか逆らう術もなかったよね、昔は)信じている子供たち。
正しい選択と心のトラウマの関係を、加賀はグっと攻め込むが…
ドラマで観てきた人形町の風景・お店・水天宮もちゃんと出てくる。
本当にこの町を密着して描き続けたドラマなのが分かる。
なのでロケの様子も観ていて楽しめるし、サービスは満点。
まぁ~これなら今回もスペシャルドラマでいいんじゃないの?と
わざわざ劇場でお金を払ってなんで映画にしたの?という意見も
出そうな気がするが、だって東野圭吾が映画用に書き下ろした、
っていうんだから、やはり大画面で観た方がいいと思う訳なのだ。
日本橋の「麒麟の翼像」を見たくなる、確かに(何度も出ますから)
ここがスタート地点。に込められたそれぞれの思い。
非常に悲しい話ではあるが、人情という意味では太さを感じる。
まだまだ捨てたもんじゃない(大人だって子供だって)それぞれに
色んなことを考えて、おそらくその時は最善の策を練ったはずだ。
しかし思わぬ方向へ事態が流れ、あらぬ方向へ運が向いてしまう。
そんな時は初心にたち帰り、もういちど考えてみてはどうだろう。と
いう作者のメッセージが聞こえてきそうだ。
キャストでいえば、三浦貴大も最近非常によく見かける^^;が、
若手の新垣結衣も松坂桃李も着実に力をつけていて頼もしい限り。
皆ここから(もっと)羽ばたいていけるように、加賀さん共々祈ります。
田中麗奈のおせっかい…が身に染みる人間でありたい、な。
(緋田康人(役名なし)の絶妙な笑いを誘うタイミング、見習いたいわ)
ハッピーエンド?
ドラマとか一切観てないです。でも全然観れました。そこは良かったです。内容がね~小説観てないんで否定しずらいんですけど、容疑者の人がホンマにアカンことしてるし、犯人の動機とかもベタというか、途中で分かってしまうし、内容は3ですね。ただ俳優やら演出やらで映画がぐっと良くなってます。造り方が上手かった映画ですね。
原作を凌駕する出来映え!
東野圭吾原作による前作映画「容疑者Xの献身」が原作の魅力を引き出す事が出来なかったのに比べて、本作は結果的に原作を凌駕する出来栄えと考える。そもそも原作がキャッチコピーにある「傑作」とはほど遠い出来であったことが映画化に際し幸いしている。
犯人の動機の弱さ、被疑者の言動の?、題名のこじつけ等々原作には隠し難い欠陥があり、前作の「新参者」「赤い指」と比較しても凡作と言わざるを得ない。ところが映画はそういった細部にお構いなくグイグイ引っ張っていって強引にラストまで到達させてしまう。なんとなく納得させられるのは東野圭吾のプロットが良く出来ているからだと思う。
映画が原作を上回った珍しい例だと思う。
悲しい祈りの末路は…
元々、伝説の動物である上に、希望の象徴として翼までおまけした麒麟のブロンズ像。日本の中心にこの像を建てた人は、どれだけ大きな希望を託したのだろう…。
時は経ち、麒麟像は登場人物たちそれぞれの祈りを受け止める。それぞれが悲しい背景を抱えながら。そして、殺人事件も麒麟像は見ています。
たくさんの悲しみが詰め込まれ、勇猛な姿がどこか悲しげに映ります。
祈りを込めるのは、その翼は必ず飛べると信じているから。
血を流しながら最後の力を絞って込めた祈りも、消えてはいないはずです。届くべき人の心にちゃんと届いたのだから。
ラストには、それぞれの悲しみにもすぅっと光が差し込んでくるような気がしました。
日本橋は首都高の下に隠れているけれど、麒麟像の真上に上下線で隙間が空いているのは、「空へ飛び立てるように」という建設者の人情が表れているのかも…。
加賀刑事が真相を追い求める、シリーズの最新作ですが、その着眼点にはホントに関心です。普通ならどうでもよさそうな些細な所を突き詰めるのは、なかなか容易ではありません。何気ない言葉や動作も拾い上げ、糸口を見出していきます。自分なら絶対見落としてる…。
また、加賀と松宮のやり取りも面白いです。加賀が松宮に代わりに捜査報告をさせようと後ろから突っつくシーンが好きです。
この映画ですが、原作本を事前に読んで予習。それから鑑賞しました。自分の場合、特にミステリー映画は予め内容が分かっていないと、脳内でバックして考えている間に置いてけぼりに遭い、面白さ半減というパターンが多いので…。
という訳で、原作と対比しながらの鑑賞でしたが、それはそれで違った見方ができました。
細かい所で原作と違っていたり、付け足されていたりしました。無意味だと思うものから、変更して筋が分かりやすくなったものまで、色々あります。
原作にはない中で特に好きなのは、八島・香織カップルが上京した日付を問うくだりです。これが最終的にストーリーでとても重要な役割を果たしています。シーンの中で、日本橋の監視モニターが出てきますので、よーーく目を凝らして見てください。後になって、パンフレットを見て気付きました。
もう遅い…。泣きに繋がるせっかくの大事な所を見落としました…。
謎の欠片の繋がりが問う人命の在り方
ドラマも原作も未見のため、ジャーナリストやのになぜか茶店でバイトしている黒木メイサや唐突に現れる田中麗奈看護師、部下の溝端純平etc.テレビドラマから把握してないと接点が解りづらいサブキャラが所々現れ、やり取りに戸惑う場面は若干あったものの、事件そのものの謎を仕掛ける配置が巧く、無知な輩でも面白く拝見する事ができた。
阿部寛が劇中にて
「殺人は癌細胞みたいなもんだ」
と呟くシーンがあり、
事件を機に被害者、加害者の家族が抱えていた闇が露わとなって、更に深刻化していく。
それに連れ、黙々と真相を追う阿部寛も自身の家庭内の問題を重ね、憂うという血生臭さより、家族について考えさせられるヒューマニズムが濃くなるタッチは、『容疑者Xの献身』同様、人間の関わり方を問うサスペンスとして向かい合え、興味深かった。
容疑者のフィアンセで彼の無実を唯一叫び続ける新垣結衣の苦闘が健気で胸を打つ。
ハケン、イジメ、ネット、家庭崩壊、マスコミ報道etc.現代にはびこる問題を小気味良く絡めて、全ての欠片が組み合わさった時、事件の重大さを一同が思い知る。
あの衝撃波こそ東野圭吾作品の醍醐味であり、『砂の器』『ゼロの焦点』etc.松本清張を受け継ぐ社会派ミステリーの真打と評しても過言では無かろう。
テーマがテーマだけに、説教臭さに熱を帯びてしまうのが、難点やけど、2時間ドラマをスクリーンに映したような安易な創りのサスペンスではないと断言できる見応えである。
最後に短歌を一首
『巡る鶴 血染めの翼 日本橋 溺れて浮かぶ 穴の償ゐ』
by全竜
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