「すべて子どもたちの将来のためです」麒麟の翼 劇場版・新参者 shimoさんの映画レビュー(感想・評価)
すべて子どもたちの将来のためです
映画「麒麟の翼 劇場版・新参者」(土井裕泰監督)から。
観終わって、帰宅後に劇場内で書き留めたメモを整理していたら、
「あっ、そうか」と、今更ながら気付いたことがある。
どうしても「謎解き」「犯人探し」に夢中になってしまいがちな
ミステリー作品の中から、原作者が伝えたいことを探すことも、
映画鑑賞や読書の楽しみ方の1つとなっている。
今回は、劇団ひとりさんが演じる「中学校水泳部の先生」が発した
「すべて子どもたちの将来のためです」
子どもたちがある事件を起こす、しかし彼らの将来を考え事実を隠す。
受験前の中学3年生に対して、よく使われる美談のようだが、
この行為こそ、彼らに「悪いことをしても隠せばいい」という
メッセージを刷り込むことになる、と忠告している。
阿部寛さん扮する主人公の刑事・加賀恭一郎が、先生に問い掛け、呟く。
「数学の先生でしたよね。
子どもたちが正しい公式を学べるよう指導してあげてください」
この台詞が私のアンテナに引っ掛かってメモしておいたら、
その謎解きが、全体のメッセージへと拡大していった。
「すべて子どもたちの将来のためです」と先生、
「それで将来がどうなった?」と加賀刑事。
さらに「あんたが間違ったことを教えたから・・・」と詰め寄るシーン。
その間違った教えこそ、今回の事件につながった、そう言う意味で
「これがあんたの作った将来だ、あんたに人を教育する資格はない」と
言い切る言葉には力があった。
「間違ったことや悪いことをしたら、隠さない、逃げないで対処する、
それこそが『勇気』というものだ」と、「生きていくのに必要な公式」を、
先生は子どもたちに教えるべき、それが先生の役目だよ、と
私なりに解釈してみた。
今回の事件、影の犯人は、先生だったのかもしれないな。