「【高度経済成長期を担った敏腕営業マンが、ステージ4の癌を告知され、終末を迎える姿勢に頭を深く垂れたドキュメンタリー作品。家族を愛して大切にしていたからこそ、あの終末を迎えられたと思った作品でもある。】」エンディングノート NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【高度経済成長期を担った敏腕営業マンが、ステージ4の癌を告知され、終末を迎える姿勢に頭を深く垂れたドキュメンタリー作品。家族を愛して大切にしていたからこそ、あの終末を迎えられたと思った作品でもある。】
ー 癌の末期の方のドキュメンタリー作品という事で、重いトーンかと思いきや、ステージ4の癌を宣告された、故、砂田さんの姿を娘さんの是枝監督の当時助手であった砂田麻美監督自身が飄々としたトーンでナレーションを担当し、父の死に向かい会っている姿が印象的なドキュメンタリー作品である。-
◆感想
・映画の対象となった砂田知昭さんが、バリバリの営業マンで、役員まで上り詰め、退職を迎える姿から物語は始まる。
ー 休日もなく、接待ゴルフをし、会社に貢献する姿。高度経済成長は、砂田さんの様な方々に寄って成し遂げられたのだなあ、と思う。そして、定年退職の日に皆に送られる姿。
だが、御夫人とは土日も厭わず働いてきた結果の溝が出来ている・・。-
■だが、砂田知昭さんが、ステージ4の癌告知をされてからの、自らの終末に向かっての精緻な段取りをする姿は、心に響く。
ー この方が、周囲になるべく迷惑を掛けずに終末を迎える過程を、自ら”to do 1"から精緻に計画して行く姿。
自分の事だけではなく、周囲の事も考えた用意周到な計画。そこには、砂田さんの人間性が見て取れる。自分の葬儀を”シンプルに、コストを掛けずに”行う事を考える姿勢。ナカナカ出来ない事ではないであろうか。
砂田さんがサラリーマンとして、役員まで上り詰めたことが良く分かるし、人柄も伺える。
宗教も仏教から変えている。ここまで、遺される妻や、子供たちの事を考える事が出来る人は、稀ではないだろうか・・。-
・更に驚くのは、砂田さんが、身体が病に侵されて行く中でも、母や妻と共に伊勢旅行をしたり、ギリギリまで生の喜びを享受している姿である。
ー 医者も驚いている。-
・だが、年を明ける事が難しいと医者に告げられた時に、妻が涙ながらにアメリカに居た息子に連絡を取るシーン。
ー 砂田さんの息子さんが、急遽、孫を連れ日本に戻って来る。そして、彼は父親譲りの聡明さで、総てを仕切って行く。勿論、砂田さんが書いていたエンディングノートが元になってはいるのだが。
砂田さんご夫婦が、キチンと子供を育てていた事が、良く分かる。-
■”to do 10"のご夫婦だけの会話のシーンは可なり沁みる。涙がボロボロ出る。
妻からの感謝の言葉・・。夫からの感謝の言葉。
<今作は、日本の高度経済成長期を担った男の、見事なる生の終活を描いたドキュメンタリー作品である。
故、砂田さんの妻や家族を想っての、終活プランを実行していく様。
それを支える息子さんを主にした、家族の姿。
砂田さんが、激烈な仕事をする中で、如何に家族を愛して、大切にしていたからこそ、あの終末期の迎えられたのだろうと思ったドキュメンタリー作品である。>