「恩を仇で返す・・」ミケランジェロの暗号 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
恩を仇で返す・・
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ウィーンのユダヤ人画商の息子ヴィクトル・カウフマンと兄弟同然に育てられたオーストリア人の使用人の息子ルディ・スメカルの友情と裏切り、恩を仇で返す苦い物語。裏切りをテーマに持ち出したのは作者のユダヤ観、キリストとユダの物語の裏返しの暗喩かもしれない。
第二次大戦下、訳ありのミケランジェロの絵を巡って、二人の生き残りゲームのような展開が綴られる。
生い立ちの過程で何があったかは描かれないがスメカルの屈折した感情に火をつけたのはナチスの台頭のように描かれるが元々欧州では反ユダヤ感情が根深かったことも否めない。
原題のMein bester Feindは直訳では「我が最高の敵」なのだろうがシニカルでピンとこない。かといって邦題の「ミケランジェロの暗号」が適切かといえば、暗号など出てこないのだから「ダビンチ・コード」人気に便乗したかっただけの宣伝部の思惑が透けて見える。
一連のユダヤ人の悲劇、ホロコーストものと違って主人公はお宝の絵画のお蔭で生き延びるのだが、お宝はフィクションでしょう。
彫刻のモーゼ像はローマの教会に飾られているが、モーゼの頭には角があり、力の象徴とされたが後にモーゼがユダヤ人であったことから悪の化身の証と歪められてしまった逸話がある。劇中でも指摘があったが彫刻の下絵と思われる素描に角が無いのはやはり不自然かも知れない。
絵画の行方は早々に察しがついてしまうのでミステリー感は薄い、友人には裏切られたが恋人は愛を失ってはいなかったというのが救いだがテーマであろう二人の確執の様は軽妙にも描かれるので深刻さは薄まるものの作り物的な味わいがして、興を削いだかもしれない。
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