「俯瞰でしかものを言えないが」シャッフル うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
俯瞰でしかものを言えないが
入り込んで見たわけではなく、あくまでも「ながら視聴」に過ぎないのですが、そのあまりのひどさに思わず見入ってしまいました。逆説的に、出来が悪いと目立つということなのかもしれませんが、まず、何といってもカメラアングルが単調で、別に何か狙いがあってのことではなく、舞台的視点というか、一点から凝視したような長回しが続くので、非常に根気が必要な退屈が続きます。
仮に舞台を観劇に行ったとしても、見る人によって、左側に注目したり、奥行きの通行人の人でもちゃんと芝居をしていたりするのですが、映画の難点は、アップならアップの視点がずっと続くので、他の情報が一切届かなくなることです。
簡単に言うと、同時進行性がないということです。
セリフによるキャッチボールが基本の会話劇で、人物の心理のやり取りを見せたいようですが、登場人物のキャラクターが薄っぺらで、俳優たちの工夫のあとも見つかりません。脚本に忠実に演じた結果なのか、役を愛していないのか。
さらには、登場人物が若手ばっかりで、絵面に変化がなく、俳優に払うギャラが工面できなかったのだろうか?なんて、いらぬ心配までしてしまう。脚本、カット割りの段階で、いくらでも推敲できただろうに、考察の不足によって、見切り発車的に映画をスタートさせた印象が拭えません。
銀行強盗が警察らしき公権に包囲されたらしき冒頭のシーンから、ダメポイントがボロボロと出てきています。リアリティ、カメラワーク、カット割り、集団の動き、銃を構えた人間がガムを噛んでいたり、投降を呼びかける人間がタバコを吸っていたり、「特定の印象」を与えるしか意味のないカットに、特別な意味を持たせたいのなら、それなりの演出が必要です。音楽も、センスを狙っているようでいて「置きに行っている」音ばかりで、レベルが低い。
30分に短縮できれば、もう少し面白くなったかもしれません。映画にする必要性はまったく感じませんでした。