「痛みのない情報社会に一喝」007 スカイフォール ソロモンさんの映画レビュー(感想・評価)
痛みのない情報社会に一喝
ダニエル版「007」三作目にして「007」シリーズ生誕50周年作品。
なので気合も入っていただろうと思わせるほど、映画としてもとても面白い作品になっていたと思います。
アクションシーンは大作映画の割には地味でド派手さが欠けていましたが、無駄に「ジェイソンボーン」シリーズみたくカメラワークをブラしたり過度の画面の切り替わりがなかったため非常に見やすかったです。
CGを極力使わないスタンド重視のアクションも「生身の人間」としてのボンドをより際立たせ緊迫感もあって見ごたえあり。
それからストーリーもとてもよく、特に映画に登場する各キャラクターも魅力的。人間味ある演技を各役者がしてくれているので感情移入もしやすいです。
特にシルヴァは悲劇的な悪役としては良かったと思います。最初はなんか不気味なやつだなと思っていましたが、終盤に行くにつれ不気味な笑顔の裏にあるMへの憤りと子から親への愛情が見えてくる様はこのキャラの悲痛な過去があったのだと思わせます。
これらを見てシルヴァとボンドの違いってなんだろうなと思ってしまいました。
Mから見放されたても忠誠心と英雄心を保って戻ってきたボンドと、復讐心にとらわれたシルヴァとの違い。多分それは直に戦場でどれだけ痛みを味わい他人の痛みも見て味わってきたかだと思います。
前二作「カジノロワイアル」と「慰めの報酬」でそれを味わってきたボンドに対しシルヴァはネットという情報社会に浸りすぎてそれを知らなかったためあのような違いが出たのだと思います。相手を理解し思いやりを思いやりを持つということにシルヴァは欠けていたからボンドとは違いMに対して復讐心しかわかなかったのではないかなと思います。
その他にも現代の情報社会の欠点が見て取れるようなシーンがあり、この映画は画面に表示される絵では味わえない、現場百回でしか感じることができものがあると情報社会に一喝しているように思えました。
人間味あふれるドラマで、「007」シリーズに新たな可能性を与えた一作だと思います。なかなかいい映画を見させてもらったと思える作品でした。