「世代交代、生い立ちを思う静と、アクションの動の対比を愉しむ」007 スカイフォール 長井 祥和さんの映画レビュー(感想・評価)
世代交代、生い立ちを思う静と、アクションの動の対比を愉しむ
ダニエル・クレイグ主演になってからの007シリーズは、アク
ション映画の本流っぷりを発揮してくれており、毎回映画館に見
に行っている。
本作でもそのワイヤーアクションっぽくない。正統派のアクショ
ンシーン満載で、予告編に流れるショベルカーで列車を破壊する
シーンなどは本の序の口に過ぎない、手に汗握る展開である。
が、ただ単調なアクションの連続だけにとどまらず、静の部分に
も多くを割いているのが今回の007の特徴である。全編を通し
て「世代交代」「生い立ち」がテーマとなっており、そのテーマ
を背景として登場人物の心中を慮ってみると面白いかもしれない。
また、007を観ているだけでも異国情緒が堪能できることも、
私が本シリーズを好む理由なのだが、本作でもそれは健在で、上
海の電光掲示をバックに激しいバトルの応酬や、大海原の行く手
にある廃墟の島(日本人にはご存じの場所)、さらにはエキゾチ
ックな市場、そしてとどめはスコットランドの荒涼たる大自然が
スクリーンに展開する。スコットランドは私の好きな場所であり、
この景色には息を飲むばかりであった。
また、冒頭のクレジットが非常に凝っていることも、本シリーズ
の特徴だが、本作でもそれは健在で、アデルの歌う主題歌も非常
に素晴らしい出来で、音楽と映像のすばらしい競演には引き込ま
れるばかりである。このシーンだけでもまた見たいぐらいである。
他方、ボンドガールについては、本作では中途半端な位置づけに
終わってしまったことは否めない。また、悪役の迫力にも欠ける
ところがあるように思えたのは、先日バットマンシリーズを観て
しまったからなのか。でも演技力が貧弱だったわけでは決してな
く、悪党の弱い心中を演じている点については、さすが名優とい
うだけある。
'12/12/02 ワーナーマイカルシネマ 新百合ヶ丘