「意外とアクションは抑え目。」007 スカイフォール sigeさんの映画レビュー(感想・評価)
意外とアクションは抑え目。
007シリーズはピアース・ブロスナン版から劇場で観始めて、
「カジノ・ロワイヤル」の無骨なボンドに一目惚れ。
血の通った重みを感じられるアクションシーンが好きでした。
続く、「慰めの報酬」は・・・“アレ?”
“ファンはボンドmeetsボーンを求めているんじゃない!!!”と
シリーズの今後に一抹の不安が・・・。
その後、MGMの売却問題で
“もう二度とダニエル・クレイグ=ボンドを観れないかも”と一度覚悟してからの
待望の新作です。
全米では過去最高の興行収入&批評家からの高評価などの嬉しいニュースに期待が高まり、
上映開始まで劇場内ではアデルの主題歌が流れ、
“あぁボンドらしいいい曲だ”と期待が否応なく高まります。
で、観た感想は・・・。
トータルだと、
「カジノ・ロワイヤル」のようなアドレナリンが高まるような作風ではなく、
Mとのドラマ仕立て風。
ここは少々肩透かしを喰らいました。
傑作といわれる「ロシアより愛をこめて」を観て、
ちょっと食い足りないと感じたことを思い出しました。
逆に、初期の007が好きならば今作は高評価なのではないでしょうか。
<特に良かった点>
・アクションシーンが前作より観やすい。
正直、サム・メンデスなので前作のマーク・フォスターのようにアクションシーンは不安だらけだったのですが、非常に見やすい撮り方をしているため、状況把握がしやすく物語に入っていきやすい。
・画面の色彩(特にシルエット)が美しい。
上海のシーンは言わずもがな、スコットランド等も暗がりのシーンが多く、
画面から冷たい感覚、スパイ映画の味が出ていました。
・粋な台詞・仕草がステキ。
タマフルの「人を殺して捨て台詞特集」でもあったようなボンドの台詞に思わずニヤリ。更に今回はMも粋なことを言います。
そして、列車に飛び移って、袖を直す仕草。カッコ良すぎます。
<特にノれなかった点>
・ハビエル・バルデムのキャラクターがちと弱い。
案内するボンドガールが口にしただけで震えるほど恐ろしいキャラクター・・・でした?
いや、初登場シーンは、そりゃ男子的には“恐ろしいシーン”でしたよ。
「カジノ・ロワイヤル」のル・シッフルもなんか怖かったけど、
今回は直接的でいや~~~んなカンジでした。
さすが「アメリカン・ビューティー」の監督!!!
でも、それ以降は私怨ばかり。
「ノー・カントリー」のような不気味さを期待したが、意外とステレオタイプな悪役でした。
・無用なラブシーンが水を差す。
本作の場合、ボンドガールは完全に添え物。ラブシーンはいりませんでした。
ピアース・ブロスナンからの007に慣れてしまった人には物足りないかもしれませんが、
スタイリッシュかつ原点回帰という意味では大満足な出来ではないでしょうか。
なお、エンドクレジットが終わるまで席を離れないことをお勧めします。
本編で見た瞬間に“もしやこの場所は”と思った、
ある「近代化産業遺産」がクレジットされています。
実際に生で観てきた者としては、非常に感慨深いクレジットでした。