「男はみなマザコン」007 スカイフォール kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
男はみなマザコン
ジェームズ・ボンドの特徴をよく活かして、国に対する忠誠心=Mに対する忠誠心みたいな一種のマザコンとさえ思えてしまう。一方で強敵ミスター・シルヴァ=ティアゴ・ロドリゲス(ハビエル・バルデム)にしても、MI6やMを恨み続けて復讐を図ろうとしている。元エージェントなだけにコンピュータには軽々侵入できるし、組織本部を爆破したり引っ越し先まで予測しているほど内部に精通している。入れ歯を取ったときの顔の歪みはちょっとホラー映画みたいだった。
オープニングのエピソードではパトリスという強敵もいたのだが、列車上での格闘の末、ボンドは生死をさまようほど痛手を被り、受けた銃弾の痕にはウランが検出って・・・よくぞ復活してくれたよ!ボンド最強説。試験は不合格だけどね・・・
上海、マカオと緊迫する場面も続くが、圧巻は廃墟マニアも大喜びしそうな長崎県・軍艦島でのシルヴァの隠れ家。さらにジェームズ・ボンドの過去にも肉薄する今作。スカイフォールの意味さえ謎めいていたが、後半にはスコットランドの故郷の地名だとわかる。Mを囮としてシルヴァをおびき出し、その間要塞と化していくのだ。
スカイフォールでは銃撃&爆破、爆破、爆破。大掛かりで金もかかってそうなのに、前作『慰めの報酬』の予算の半分なんだとか。この重厚さはやっぱり監督の腕なのだろうか、それとも重いストーリーに騙されたからなのか、アデルの主題歌が良かったことも加味して心に残るボンド作品になりそう。というか、Mはマザー?エマって誰?と、スカイフォールの番人キンケイド(アルバート・フィニー)の過去も知りたくなってくる。そしてMが・・・さらにマネーペニーが・・・と、若きQの登場以上にラストにも驚かされました。
エンタメとはかけ離れたボンド作品。そうなったのもシルヴァの目的はMを単純に殺すことにあったのではなく、“過去の罪を思い出させて”から殺すというものだったから。狂ったマザコン。そしてボンドにもそれを味わわせようと苦しめる様子。多くのエージェントを殺していく展開も、ひょっとしたら、Mを独り占めしたかったからではないのか?などと感じてしまった。