劇場公開日 2023年11月17日

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「次回作がこれほど待ち遠しいのは初めてだ!」007 スカイフォール あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0次回作がこれほど待ち遠しいのは初めてだ!

2019年5月5日
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鑑賞方法:DVD/BD

感動した!
さすが50周年記念作だ
ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドはこの3作目にしてリブートが遂に完結したのだ

過去2作とはお話は直接は繋がってはいないが、三作揃って初めて、21世紀の現代の新ジェームズ・ボンドが誕生する物語が完結する仕掛けだったのだ

単独で本作を観ても面白いだろう
しかし、本当の面白さ、感動は3作品を順に観なければ分からない

本作で遂に駆け出しだったジェームズ・ボンドが、本当のジェームズ・ボンドになった

マカオのカジノに乗り込んで東洋美女を横にウォッカマティーニを飲み良いシェイクだというボンドは、タキシード姿もようやく板についてきた
地下鉄車輌に乗り込んだ時の軽口
レトロなボンドカー、アストマーチンを繰り出すときに響き渡る007のテーマ曲
これこそボンドだ

やはり敵が大きく強くなければ、ジェームズ・ボンドはボンド足り得ないのだ

未来的な上海の超高層ビルのシーン、シルヴァの無類の強さ、まさかそこまでやるか!という度肝を抜く展開
ここを今作ではキチンと押さえてきた
前作での課題を見事なまでにクリアしたといえる

監督も撮影も音楽も変わった
特に撮影は実に見事だった
前作までのような手ぶれカメラとクローズアップを多用した手法はスピード感は有っても、スケール感や画面の美しさはなかった
しかし、今作のカメラは美しく気品すらある
夜の上海のシーンやマカオでのシーンは特筆ものだ

冬のスコットランドの荒涼としたシーンも見事だだった
スコットランドをメインにしたブレイブハートより美しく撮れているかも知れない程だ
このシーンの素晴らしい出来映えによって、我々はジェームズ・ボンドの人間の成り立ちと心象風景がこのシーンによって理解できるように撮られているのだ

スカイフォールとはスコットランドにある、ボンドの実家の屋敷があったところの地名
ボンドの両親の墓もでてくる

中盤の精神科医による診察でスカイフォール?という質問はもちろんここのことだろうが、冒頭の恐ろしく高い橋からのボンドの転落シーンにもかかっており、さらに終盤の凍結した池からの転落にもかかる
しかし、本当にかかっているのは、Ml6が敵側に浸透されM自身が暗殺の危機のさらされるどころかMl6本部が爆破され、さらには大臣が出席する審問会まで襲撃されるような事態を受けているのだ
つまり冷戦後の世界は終わった
そして始まったのは今までが天国と思えるようなテロまみれの時代だ
冷戦の時のような厳然とした戦線はない
どこに戦線があるのかも判然としない
次の瞬間に戦線は頭上を通過するかもしれないのだ
今までのような「緩い」時代ではなくなった
天が崩れ去ったのだ
スカイフォールとはそういう意味だったのだ
そしてそれはテロに日々脅かされている現実そのものであり、映画の中の話ではない
それが21世紀の現代なのだ

女性Mとして過去7作を演じたジュディ・デンチは今回で降板
見事に旧世代から、21世紀の現代にバトンを渡した
審問会でのMのスピーチシーンは感動ものだ
今作の真のボンドガールは彼女だった
ボンドの腕の中でこと切れる彼女の額にボンドが涙を落としながら口づけする姿はまるでラブシーンのようでもあった美しいシーンだった

そしてまたボンドは母の死を看取る息子のようでもありました
これまでのダニエル・クレイグのボンドは、口うるさい母に反抗する子供のようなものだったのかも知れない

孤児になった彼が秘密情報部員となり上司となったMが彼の中では新たな母の存在となっていたのだ
両親の死を受け入れ数日間閉じ籠った秘密トンネルから出て来たとき彼は大人になっていたという
しかし、それは本当は母の愛に飢えた心をねじ伏せた背伸びした姿だったのかも知れない
無意識に母を求めており、Mにその対象を見つけたのだ
母に認められたい、その欲求が彼を駆り立ていたのかも知れない

それは敵のシルヴァもまた同じだ
彼は母に愛されず捨てられたと思いこみ、復讐を誓う子供だ
つまり彼は裏返しのボンドだったのだ

Mを守り切ったのにも係わらず、彼女は耐え切れず何かをボンドに伝えようとするが言葉にならず力尽きる
だがボンドには伝わっている
貴方をずっと信頼していた、そのような言葉だったのだろう
その時、厳しい母に認められ彼は遂に本当の大人になったのだ
そあなたが一番可愛い息子だった
彼にはその様にも聞こえたのだ
ボンドの流す涙は母を失った涙なのだ

そしてまた今作は、新マネーペニー誕生物語でもありました
このボンドと一度ならず共に働いた現場上がりのマニーペニーなら、彼の活動の実態と仕事の進め方をよく知っている最大の理解者として新ボンドのこれからの活躍を大いに支えてくれるに違いない

ともあれ、新M、新マネーペニー、新Qが揃った
新ジェームズ・ボンドの活躍の準備はできた
このラストシーンにたどり着く為にこの3部作が必要だったのだ

ダニエル・クレイグのボンドは今作ではわざと年齢相応の老け方をみせる
その謎はこのラストシーンで解けた
若さは老練に変わり、余裕をもった旧世代にも匹敵するボンドに完成されたその姿を見せるためのものだったのだ

次回作がこれほど待ち遠しいのは初めてだ!

あき240