「今日の一句『どん底に もがいて探す 生きる意味』」ヒミズ 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
今日の一句『どん底に もがいて探す 生きる意味』
愛情について考える事すらできない貸しボート屋の中坊が、オカンに捨てられた挙げ句、ろくでなしのアル中親父を殺す救いようの無い青春映画。
どん底でもがく彼を真っ先に理解すべきヒロインのクラスメートは、必要以上にハイテンションでやかましく、嫌悪感が募る。
殺気めいた無償のエールは、母親に酷似した存在感すら漂う。
己のしでかした罪への懺悔と開き直りが、さ迷う街角にて様々な狂気との出逢いにより、行き来し、ネチネチ堂々巡りするため、切り口はクドく、やがて、嫌悪感は作品全体を征服する。
人は他人を支配する事でしか快感は得られないのか。
だとしたら、弱者にとって暴力を解決するには暴力のみなのか…
とやり切れない気持ちだらけでスクリーンを見守る自分もまた情けない生物だ自覚し、悲嘆に暮れる。
しかし、最後まで2人の苦悩に見入ってしまった。
原作は未読なので、古谷実の描写力なのか、園子温の表現力なのかは解らない。
この映画自体の魅力自体理解不能である。
クランクインが震災直後だったため、展開が大幅に変更され、強引極まりないタッチにレビューは否定論が上回る始末だ。
だが、私は正解やったと断言したい。
震災以降、《生きるとは虚無感との闘いでしかない》と思う事が日に日に強くなっているからだ。
辛いんだとか、悲しいんだとかじゃない。
とにかく何かが虚しいんだ。
大人になるってそういうことなんだよ。
責任とか義務とかって面倒臭いだけだ。
職場とかで苦労するのが生き甲斐やとかヌカす奴は、欺瞞以外の何者でもない。
そんなもん嘘っぱちだ。
園監督の『冷たい熱帯魚』の吹越満やないけど、「生きる事は痛いんだ」
人生なんて、それ以下でもそれ以上でもない。
そもそも生きる意味に結論なんて無い。
そうやって人間は悩んで、狂って、泣いて、笑って、死に絶えていく生き物なんやな…
と、包丁入り紙袋を握り締め一心不乱に走る彼を観て尚更思った。
こんなん映画批評ちゃうね。
まあイイや。
最後に短歌を一首
『波去りて 傘は要らない 泥の夢 沈(鎮)む血の雨 掃き溜めの詩』
by全竜