「【”小さな町で電気屋さんを営む頑固な父が夫婦で作った”お客様台帳”を大切にしている訳。”今作は今や希少な町の小さな電気屋さんを舞台にした頑固親父と3人姉妹の家族の絆を描いた小品なのである。】」幸福(しあわせ)のスイッチ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”小さな町で電気屋さんを営む頑固な父が夫婦で作った”お客様台帳”を大切にしている訳。”今作は今や希少な町の小さな電気屋さんを舞台にした頑固親父と3人姉妹の家族の絆を描いた小品なのである。】
ー 今や、私が住む地方都市でも町の電気屋さんは無くなって、今作に登場する様な大型家電量販店ばかりになった。大型家電量販店に、電化製品を修理に出すと”修理代は高くつきますから、新品に買い替えませんか?”と言われることが多い。
時代の流れかも知れないが、我が町にも今作の「イナデン」の様な、アフターケアが万全な電気屋さんが復活して欲しいモノである。-
■若くして家を出た稲田怜(上野樹里)は、東京のデザイン会社の新人イラストレーター。実家の田舎の電器店「イナデン」で採算を度外視した修理の仕事ばかりの父・誠一郎(沢田研二)に反発して都会に出てきたが、自分のイラストを主張しすぎて上司(田中要次)と衝突して会社を辞めるが、姉の瞳(本上まなみ)が入院したという手紙を妹の香(中村静香)から受け取り、帰省するが本当は父がアンテナ修理の際に落っこちて骨折したという事だった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・じつに、ホンワカした田舎の電気屋さんを舞台にした話である。外面の良い父は、亡くなった妻と一軒一軒町の家を回って、家族構成、家の間取りなどを記した”お客様台帳”を大切にし、お金にならない電球取り換えや、チャンネルの動かし方までお年寄りに教えている。
・だが、徐々に父・誠一郎が、町の人達から電気製品以外でも頼りにされている事が分かって来る過程で、父の血を引いた頑固娘の怜が少しづつ父を認めて行く様を上野樹里さんが実に上手く演じているのである。
・雷の日。足が治っていない父が病院を抜け出して”こんな日には、皆が困るんや!”と言って帰って来ると、電気が付かないなど、様々な電話がかかって来るが、父はそれに一生懸命に対応するのである。
その姿を見て、怜は”お客様に喜ばれる仕事とは何か”。”を学ぶのである。
・彼女が昔に見てしまった酒の飲めない父が母が亡くなったのに、小料理屋にイソイソと入って行く姿の理由も、怜と香が意を決してその店に行き、小料理屋の女将さんに話を聞くと引っ越して来た女将さんと幼い息子が町に馴染めない中、父が息子のオモチャを直して上げた事が分かるシーンで、二人が”でも、あの女将さん、お父さんの事が好きだよね。””でも、モテないお父さんより良いじゃない。”と交わす会話など、怜が成長したってことじゃないかなあ。
そして、怜は再び東京のデザイン会社に戻って仕事を再び始めるのである。
<今作は、今や希少な町の小さな電気屋さんを舞台にした頑固親父と3人姉妹の家族の絆を描いたハートウオーミングな小品なのである。>