赤い靴のレビュー・感想・評価
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編集に難はあるけど、それをも超える魅力的な映画。
アンデルセンの童話をモチーフにした
1948年制作のイギリス/バレエ映画。
スターへの階段を登る主人公ヴィッキー。
同じく有名人へ仲間入りを果たすジュリアン。
同じバレエ団で繋がるダンサーと音楽家。
バレエ団は「赤い靴」を題材に新しい公演へ。
足を入れると死ぬまで踊り続ける赤い靴の話。
美しいバレエダンサー。
美しい舞台装置。美しい音楽。
公演は世界中で大ヒットする。
ついにヴィッキーはバレエを取るか、
それとも愛を取るか悩み、結論を出した。
しかし自身の意思とは別に靴は動く、
赤い靴に命があるように動き、踊る。
そしてラスト、彼が赤い靴を持ち
照明がそこを示すそのシーンは
なんとも悲しく、強烈な印象を残し終わる。
※
バレエを踊れるモイラ・シアラーも良いが
レオニード・マシーンの怪しくも躍動的な
バレエ・シーンはこの映画の成功を決定付けた
と、個人的には思う。
※
「アラベスク」から現代まで
山岸凉子「テレプシコーラ」への飢餓感(続編が読みたい!)から「アラベスク」を読み直していたところ、作中でこの作品への言及がありました。
「踊らずには生きられないダンサーの悲劇」のように紹介されており、まさか空美ちゃんのようなキャラが主人公では…?と思い鑑賞。
結論からいうと空美ちゃんではなかったです。。
主人公のダンサーは裕福な家の子で、私が想定したようなハードな追い込まれ方は序盤ではあまり見られませんでしたが、劇中バレエ「赤い靴」の場面では舞台ではあり得ないイメージ演出が連発されたり、なかなか実験的で楽しめました。
いよいよ終盤になるとバレエか個人の幸福か、というような二者択一を迫られ、一挙に緊迫感が高まります。
才能ある女子が迫られがちなこの問題、「アラベスク」の当時はもちろんのこと、現代でも充分起こりえるやつ。
結末は感傷的ですし展開が甘い部分も少なくないですが、バレエ、童話という古典的な題材でありながら、テーマや着眼点は現代にも通用するものを持っているなと思いました。
Amazonにあったバージョンは登場人物の顔もぼやけきっていてほとんど白黒映画、というほど褪色した場面もあったので、この作品の真価を知りたければ修復された4kバージョンを観るべきなんでしょうね…
ダンスはもちろん、音楽も作り手が天才という設定に負けない迫力があり、サントラが欲しくなりました。
ていうか映画のために新作バレエ一本作って曲も書き下ろす、なんて信じられない贅沢な話ですよね。
色彩豊かで鮮やかな映像に記録されたバレエ劇の「赤い靴」の素晴らしさ
昭和25年の日本初公開に於いて、この映画の色鮮やかなテクニカラーが大変な話題になったという。当時としては、これだけの色彩映画は無かった。ソビエト映画の「石の花」が既に3年前に公開されて評判を呼んだというが、こと色彩の美しさの点では遥かに「赤い靴」が優れている。この映画の見所が名手ジャック・カーディフ撮影の映像の美しさであり、それを最大限に表現したバレエ劇の舞台美術とその本格的なバレエ公演の見事さにある。
物語はバレエ団を舞台にしたバックステージもので、主人公のプリマドンナ、ヴィクトリアが恋愛とバレエの板挟みに会い、最終的には悲劇に終わる。このストーリーには、二人の男のエゴによりヴィクトリア一人が追い詰められるという、女性蔑視の点が見受けられる。常々イギリス映画を観て思うのは、紳士の国と言いながら女性に冷たい男が登場することだった。フランス、イタリアのラテン系と比較して、このアングロサクソン系はやはり違う。男が威張っているだけなのかも知れないが、女性に優しくない。この映画を観て、そんな思いを更に強めるくらいヴィクトリアの立場に同情してしまう。そこを含めて、このイギリス映画を観ると面白いと思う。
バレエ映画では、アメリカ映画の「巴里のアメリカ人」があり、この映画と双璧を成す。バレエダンサーを主人公にした名作では、ヴァネッサ・レッドグレイヴ主演の「裸足のイサドラ」があり、バレエの素晴らしさを映画で楽しめる三作品だと思う。
(1978年 4月22日 中野武蔵野館)
物語そっちのけでただ練習と本番を見せ続けられるだけ
総合50点 ( ストーリー:50点|キャスト:60点|演出:40点|ビジュアル:65点|音楽:60点 )
物語ははっきりと描かれることなく、日常の練習風景ばかりが描写される。ヴィッキーが同僚に対してどんな素晴らしい才能を見せたのかもわからぬままに、パリ公演に選抜されていつの間にか主役に抜擢されていた。これって映画なのにひたすらバレエを上演したいだけ。そこにどんな苦労や葛藤や踊ることへの情熱と喜びがあったのかもわからない。そして延々とバレエ公演が映し出される。これでは物語にも登場人物にもさっぱり惹きつけられない。
そして登場人物は舞台劇のように大袈裟な動きと科白で演技をする。自然な人の動きがなく、いかにも我々は演技をしているからこうなっていますという印象ばかり受ける。
後半になって物語がやっと動き始める。しかし断片的に部分部分を写すのでよくわからない。何故レルモントフは公演が上手くいっているのに若い2人の恋愛をこうまでして妨害するのか。久しぶりに登場する作曲家のジュリアンは、妻の公演を離婚を決意してまで妨害するのか。こういうのをしっかりとわからせない展開と演出は駄目です。
劇中のバレエ公演自体は悪くなかった。でもバレエを観たい人は最初からバレエを観れば良い。映画なのだからもっと物語の展開か登場人物への掘り下げが必要。それらがないままにバレエだけ観てもただのバレエ公演に過ぎず、登場人物の背景を背負った物語になっていない。
演技も演出も古い。この時代に天然色で撮影したのは評価するが、いかにも絵を背景にして撮影所の美術で撮影された場面が多いのも興ざめする。
正に不朽の名作、感動!
アンデルセン童話の物語が、劇中のバレエとしてだけで無く、映画全体で入れ子構造となっている脚本が見事
終盤の赤い靴を脱がすシーンは、劇中のバレエでの同じシーンに似たポーズでつながります
ルモントフ団長が赤い靴自体であり、ビッキーのダンスへの情熱がそれを脱がせない
本作を観る前に童話の詳しいあらすじを読んでおくと、この見事さ、バレエシーンの各場面の意味が良くわかると思います
というか、それは当然観客の頭に入っていることを前提に作られていると思われます
これが分かっていないと面白さも半減してしまうのでは無いでしょうか?
昔の映画とは思えない程スピーディーなテンポある展開
撮影も美しく、テクニカラーの鮮やかな色彩が赤い靴の鮮烈なイメージを高めている効果がはっきりと見て取れます
ショービズの裏側の世界の厳しさや雰囲気も楽しめます
何よりバレエシーンの素晴らしさ!
単なるバレエの舞台を撮影したものではなく、合成等を駆使した映画ならではの映像を展開されます
これがまた美しく正に芸術です
特に赤い靴にジャンプした次の瞬間すっぽり入って踊りだしたり、風にくるくる舞う新聞紙がヘルプマンに変わるシーンは印象的で心に残ります
ミュージカルはオペラとバレエを父母に持って生まれた事がはっきりと理解できる映画でもありました
キャリアをとるのか?、結婚をとるのか?
その両立はできないのか?
それは女性だけにではなく、男性にも突きつけられている問題です
あなたはクラスターのように女性に有望なキャリアを捨てさせる男性であるのか?
それとも彼女のキャリアを伸ばすことを優先して身を引くことを選択する男性であるのかを
ビッキーはその狭間で悲惨な運命となりました
正しい答えは 何かを男性としても考えさせられる映画でも有りました
その意味でも、女性活躍社会が叫ばれる今日、本作は重要な意味性を持っていると言えると思います
Take off the Red Shoes. 16分にのぼるバレエシーンが有名なバレエ映画の古典。
1948年に上映されたバレエ映画の古典的作品。当時はきっとスゴかったんだろうなーと思われます。今観ても全然古くないっといった評価をされている作品ですが・・・ごめんなさい、思い入れのない視点で観ると、どう観ても古いです(>_<)
個人的にバレエって生まれてこの方一度も観たことがないんですが、現代のバレエ人口ってどんなもんなんでしょうね?どこに需要があるんだろう?
主演の女優モイラ・シアラーを含め皆さん足太いな~と思ったのですが、きっとバレエでのあの動きをやるためには必要な太さなのでしょう。うん、たくましい。
何となくプロデューサーのレルモントフを見てると某ジャ⚫ーズ事務所のお偉方もこんな感じなんだろうなーっと思えてきました。そこは時代が変わっても変わらない所でしょうね。
バレエの映画ではなく、バレエ映画
イギリス映画の名作ということで鑑賞してみました。残念ながらデジタルリマスター版ではなかったので、こちらでレビューであります。
前半は、やや馴染みない演出のためか、のれない感じがありましたけど、バレエシーンはやっぱり圧巻。バレエの映画ではなく、バレエ映画、つまりバレエと映画が融合したような映像は、十分に惹きつけられました。
そして前半は弱いかなと感じていた物語部分も、後半には充実していった印象です。特にレルモントフのシーンは胸を打つものがありました。
同じバレエ映画でいったら、私的には『ブラック・スワン』よりも、こちらの方がお気に入りでした。
ただ、全体的には、やっぱり演出が、どうにもこちらの間合いに合ってこない感じがありましたかね。
赤い靴
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