「ある意味反則。でも考えさせられる。」スーパー! rockoさんの映画レビュー(感想・評価)
ある意味反則。でも考えさせられる。
前半は多少のグロはありながらもコメディタッチ。ちょっとギャグが野暮ったくてわざとらしかったのでちょっと意気消沈だったのがエレン・ペイジの参加あたりからテンポが上がっていって衝撃のクライマックス。
正直言ってリアルなスーパーヒーローというのは、ウォッチメン以降多くの人が待ち焦がれていたわけなんで、くるべくして来た作品という感じだと思います。それだけにそれやっちゃおしまいだろうという禁じ手的な表現、まあつまり露骨なグロが入ってくるわけですが、ちゃんと物語として出来上がっています。個人的には非常に好きです。アメリカンビューティーとか、アメリカン・サイコあたりに通ずる現代社会の闇と、明日の希望も糞もなく、それぞれがそれぞれの正義を主張するポストモダン、といった印象を受けました。
インターネットでいくらでも人が死ぬ瞬間を見られるのに、家の外に一歩出れば何事も起こらないまるで何かの呪いの様な退屈で平坦な世界、そういう世界で生きている人間には、彼らの心理にはどこか共感できてしまいまうのかもしれません。
あととても印象に残ったのはエレン・ペイジの台詞で「コミックだったら今の私たちはコマとコマの語られない部分にいるのかしら?(うろ覚えです)」というところです。仏教で「空」という言葉がありますが、本当のリアルというのは表現される記号と記号の隙間にあるのかもしれません。
そういえば、エレン・ペイジはジュノからその後の映画でも、どんな役をやっても「エレン・ペイジ風」になってしまうんで、この人は名優なのか、それしか出来ないのか、判断しかねていたんですが、この映画の役はとてもはまっていてすばらしかったです。見ていて「うわーこの人やばい」と思わせるほど真に迫った演技でした。役が映画を作った感じですね。