狂乱の大地のレビュー・感想・評価
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踊らされる人民
空撮による壮大な景色と民族の歌からドラムロールが勢い良く、乱行場面?から流れるテンポの良いジャズ、音楽が印象的ながらどっち付かずな主人公であるパウロの心理が読めない、今の日本の政治と変わらない、築き上げたいのは独裁国家、振り回されるだけの民衆と金持ちだけが生きやすく。
詩的なセリフが知的に難解で必要以上に思える長回しと殺伐とした映像に優雅さが、ゴダールの『小さな兵隊』やベルトルッチの『暗殺の森』と比較するのはお門違いか?何にせよシネマ・ノーヴォの旗手でもあるグラウベル・ローシャを体験出来た衝撃が炸裂した疲労感!?
権力者の搾取と民衆の怠惰
これは凄かった。政治というもの。強者は搾取することに努め、弱者は怠惰を続ける。人類の普遍的な歴史のひとつの側面。いつの時代も大多数の民衆はその国の政治や宗教について深くは考えずに権力者を只単に盲信するだけで無責任な支持や怠惰を続けてきた。その結果、権力者達にどんなに搾取されることになっても明けても暮れても我慢し続け、それがそのうち普通となり、戦争に巻き込まれながらも独裁者に縛り付けられながらも我慢し続けてきた。この結果、民衆はかつてあった恐怖や嫌な思い出を思い出さないようにそっと忘れてしまおうと努めるようになった。これが俗に言う平和ボケというやつか? しかしその間も強者は弱者から密かに搾取し続け、弱者は目をつぶって我慢し続けてきた。そしてそれはやがて戦争、独裁といった露骨な暴力に姿を変え、歴史は繰り返していく。ここでもブレッソン監督の「文明の行き着く先は、皆が馬鹿になる。」という格言が思い起こされる。しかしそういったシステムが出来上がっているのに、敢えて強者に楯突いて正義の為に行動する必要はあるのか?という疑問が湧く。どうせ世の中が変わる見込みがないのなら臭いものに蓋をして見て見ぬふりをしている方がずっと楽だし理に叶っているような気もする。しかしローシャ監督はそのような怠惰な姿勢に対して「政治をしっかりと考えずに生き続けて権力者達に簡単に搾取されるような生き方はもう止めよう。」というようなメッセージを投げかけてくる。権力者の搾取と民衆の怠惰に対する怒り、過激だがその先にある深い人間愛を感じた。内容、カメラワーク、演出、全てが神がかっていて、終始興奮と感動が止まらなかった。最初から最後まで完璧な芸術映画だった。真理を導きだす為に何度も観返したい金言的な大傑作だと思った。
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