「片腕を失っても一流のサーファーになった理由」ソウル・サーファー カタツムリンさんの映画レビュー(感想・評価)
片腕を失っても一流のサーファーになった理由
「ファミリー・ツリー」に続いてハワイを舞台にした映画「ソウル・サーファー」を観る。
ほぼ全編にわたり、ハワイの海が映し出される。
光を反射して波がうねり、風が吹きわたる。何とも気持ちがいい。
この映画の主人公ベサニー・ハミルトンは実在の人物だ。
片腕を失うというハンディキャップを乗り越えて一流のサーファーになった。
なぜ、彼女が大きな試練を克服できたのか?
まず生まれながらのサーファーであったこと。
ベサニーは、両親や二人の兄もサーファーの一家でに育つ。
歩くのを覚えるようにサーフィンに親しみ、10歳の頃には将来を期待されるサーファーになっていた。
誰よりもサーフィンを上手くなりたいという、生来の負けん気の強さ、
サーファーとして成長するという強い意志と、日々鍛錬を重ねていくという習慣が身についていたことが、最も大きい。
2つ目は、家族の愛情だ。
片腕を失い、新たな日常生活を組み立てていかなければならないベサニーのことを、
過保護にせず、彼女の意志を尊重して、
家族も新しい日常生活を作ろうとしているのが自然に伝わってくる。
ベサニーは病院を退院してすぐに海に入り、サーフィンを始めている。
家族は一緒に、サーフィンを楽しむ。
彼女はすぐに大会に出場するのだが、思うように波に乗れずに、
ライバルたちに大きな差をつけれる。
競技者の道を、一旦はあきらめ、
サーフィンから離れてボランティアなど新しい生活を始める。
家族は彼女の気持ちがサーフィンに戻るまで、待つ。
3つ目は、信仰。映画の冒頭、
サーフィンの練習を切り上げ、島の協会の礼拝に参加するシーンが描かれる、
そこでは、家族や友人、コミュニティの仲間が全員で神の前で祈りをささげ、歌を歌う。
そのような環境で彼女は育っている。ボランティアに時間を割くのも自然な行為だ。
「なぜ私にこんな試練を与えるのか」と先生に問うのだが、
先生は「この辛い経験に何か意味があると信じることが大事」と答える。
生きることについて先生とこんな会話ができるのは素晴らしいと思う。
彼女はボランティアとして、津波の被害にあったタイのプーケット島を訪れる。
そこには、津波で家族を失った人たちがいた。
ボランティアから戻った彼女は再び、サーフィンの競技者として練習に取り組み始める。
映画は、片腕を失った彼女の心の傷をことさらに強調することはしない。
むしろ淡々と競技のために、体を鍛えるところや、家での日常生活を追っていく。
主役のアナソフィア・ロブが、
負けず嫌いだが友達思いのサーファーを生き生きと演じている。
病院のベットで、サメに襲われたときに一緒にいた友人が
自分の事で心を痛めていないか案じるシーンが、
彼女の強さと優しさを表していて心に残った。