「偉大なるミス・キャスト」一命 komajeさんの映画レビュー(感想・評価)
偉大なるミス・キャスト
市川海老蔵という歌舞伎役者は、梨園随一の美形であることは、間違いない。高麗屋・音羽屋・中村屋・澤潟屋のどの御曹司と比べても、美形である。それは誰もが認める点である。ところが、歌舞伎用語で言うところの「口跡」が良いかと問われると、これは「良くない」ということで、これまた衆目の一致するところである。すなわち、低音で発声していても、声が裏返ったり、高音が抜けてしまって、なんとも言えず軽くなってしまうという致命的な欠陥を抱えている。
今回の作品「一命」でもこの弱点がところどころに見られ、一気に興ざめになる場面が散見された。
だれがどう考えても、半四郎は役所広司の任であろう。役所で観たかった。前作でも仲代達矢と岩下志麻が親子には思えず、今一つ入っていけない部分があったが、今回も海老蔵・瑛太・満島ひかりが親子には思えない。
3Dの必要性は感じない。ラストの雪のチラつきで「あっそうか」と思い出した。美術と照明は相変わらず良く、「13人の刺客」の前半部分を彷彿とさせた。三池監督は、屋内場面もしくは閉ざされた空間の演出は、見事だと思う。
いずれにせよ、市川海老蔵はミスキャスト。演技がくさ過ぎる。
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