「権力にひた走るドラッグレースの末路」リミットレス 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
権力にひた走るドラッグレースの末路
人間の脳味噌なんざぁ20%も使えば良い方で、全ての容量を全稼動させれば、人間なんてどんな難問も解決出来ると、在りし日のエドガー・ケーシーは答えたそうな。
主人公は薬の力を借りて物書きに専念すれば善いのに、欲求は止まず、金融界に殴り込み、革命児の名を欲しいままと成る。
正にアメリカンドリーム。
しかし、良薬口に苦し成らぬ、劇薬頭に苦し。
当然、副作用に蝕まれ、苦しみもがく羽目となる。
専らバッド・トリップがメインでひたすらネガティブ。
大昔、目薬を挿したオッサンが透視能力を授かる『X線の眼を持つ男』ってぇハリウッド映画(と云えど製作はロジャー・コーマン)があったが、それの頭痛薬版。
要するに、薬の効能に踊らされ、溺れちまうヨタ噺である。
主人公はめでたく出世したものの、案の定、薬の力がバレ、ウォール街の頭領デ・ニーロやヤクザに嵌められ、シッペ返しを喰らう。
後悔し、アシを洗おうと決意するが、シラフやと禁断症状で脱け殻と化してしまうため、結局、クスリを煽り、復讐に繰り出す。
そこまでして、権力の山によじ登り、居座る悪あがきの醜さを目の当たりにすると、カダフィはコレに似たクスリのファンだったに違いない。
だとすると、主人公のサゲはブッシュをダブらす。
いや、オバマだろうか。
話のスジは好きやけど、個人的には、もっとデ・ニーロ親分に引っ掻き回して欲しかった。
先生の了見を量る上で、せっかく書き上げた小説にも触れるべきだったと思う。
物語でのキリのないシッペ返しの応酬は痛々しく、“クスリは身を滅ぼす”事の意味を実感した。
こうして、マーシーや清水健太郎は人生オシマイになってもうたんかなぁ…
最後に短歌を一首
『どん底に 盛られし回路 突き抜けて 夢見て一服(毒) 止まれない橋』
by全竜