海洋天堂のレビュー・感想・評価
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【”平凡にして偉大なる全ての父と母へ捧ぐ。”今作は、自閉症の息子と、彼を気遣う末期の肝臓癌を患う父の絆と、二人を見守る善性溢れる人たちの姿を描いた作品である。】
■水族館で働くシンチョン(ジェット・リー)は、ある日、自分が末期の肝臓癌により、余命三カ月と知る。
心配なのは、妻を海で亡くし、男手ひとつで育ててきた自閉症の一人息子ターフー(ウェン・ジャン)のことだった。
自分亡き後、息子が幸せに暮らしていけるようお金の使い方、バスの降り方など一つ一つ繰り返し教えるシンチョン。
そして父は息子に最後の贈り物を用意していた。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ターフーが、水族館の飼育員の父についてきて、水族館の水槽の中を魚のようにすいすいと泳ぐ姿が印象的である。
彼は、陸上では生活がおぼつかないが、水中に入ると正に水を得た魚のように伸び伸びとした表情になるのである。
・ターフ―がサーカス団の娘リンリン(グイ・ルンメイ)に淡い恋心を抱くシーンも良い。リンリンも彼の純朴な姿に惹かれ、電話のかけ方を教えたりするが、サーカス団の催しが終わると寂しげに去って行く。
ターフ―が彼女が居なくなった事に気付く時の表情。
・シンチョンの隣に住むチャイも善性が溢れた女性である。彼女はシンチョンにも思いを馳せているが、ターフーにも優しい。偏見の眼で彼を見ないのである。
・そして、シンチョンは天に召される。葬儀の際もターフーはいつものように落ち着きがないが、水族館の館長は彼を雇う事に決めるのである。
<そして、ターフーは生前、海亀の恰好をして”父さんは、海亀になる”と言った父の姿を思い出し、海の中で海亀の背に乗って、広い海に出て行くのである。
今作は、自閉症の息子を気遣う余命僅かな父の想いと、二人を温かく見守る心優しき人たちを描いた作品なのである。>
勿論、寓話なのだが。
個人的にはグイ・ルンメイさんともう少し絡んでもらいたかったなぁ。
やっぱり彼女綺麗だと思います。
話はベタな人情劇だけど、演出の仕方が良かったと思う。この演出家は時間をうまく利用していると思った。
主演の男の子も物凄く潜水の技術が高いと感心した。あれだけ本当に潜れるのなら、仕事が出来ると思った。勿論、ウェイトは隠し持っているのだろうが。
さて 別次元の話として、このくらいの能力の障害者であれば、充分に社会で働けると思う。つまり、こう言った場を彼らに提供出来る社会づくりにこれからの混迷する出口があると思う。同時にもっと重度の障害の方でも働ける社会づくりが急務だと思う。勿論、ボランティアとかではなく、しっかりした利益報酬のある、立派な職業としてである。
老人や障害者を切って社会を繋ごう等と決して思ってはイケない。
この映画の主人公なら、床掃除よりも飼育員とか向いていると思った。勿論、素人ながらであるが。
大阪にジンベイザメを見に行くことにした。
まだ、ウミガメが沢山いる場所が世界にはあって、それを見ると地球って素晴らしいと思う。勿論、人間にとっては、海の中は人間には住めない場所だけどね。
タイトルが好き
きれいな映像でした…
水がたくさん出てくるから癒されるし、音楽もよかった
日本映画でこれをやられたら暗いわ!とかボロクソ言ってたかもしれないけど、
アジア映画だったからか
重いテーマの割にそこまで辛気臭さを感じず、なごやかに見れてよかった
父と息子の
くよくよしない前向きさがよかったです
ジェット・リーがますます好きになった!
水族館で働くワンは妻亡き後、自閉症の息子ターフーを男手一つで育ててきた。だが、ある日ワンは癌で余命僅かである事を知り…。
ジェット・リーがアクションを封印した感動作。
ジェット・リーがとてもイイ!愛情深い父親が様になっている。
アクションでは鋭い眼差しが、本作では何と優しい事!
脚本に号泣し、ノーギャラで出演したジェット・リーの並々ならぬ意気込みが伝わってくる。
息子ターフーを演じたウェン・ジャンもお見事!
息子と言っても20歳の青年なのだが、その純真無垢な姿が可愛らしい。
冒頭、海に飛び込み心中するシーンから始まり、驚くが、後から、泳ぎが得意なターフーによって助かった事が分かる。
ワン亡き後、一人で生きていく事が困難なターフーを思っての行為。死を選ぶなんてもってのほか!…と思うが、自閉症の子供を抱える親の苦労なんて計り知れない。ましてや保護すべき親は死を宣告されている。大変だね…とは、平凡な生活を送る者の偽善かもしれない。
一命を取り留めたワンとターフー。直接的な描写がある訳ではないが、それはターフーが死を拒否したのだろう。自閉症は自分の世界に閉じこもるとよく聞くが、上手く感情を伝えられないだけという劇中のセリフが印象的。
ワンは死よりも生を選び、最期の時までターフーに一人で生きていく術を教える。
買い物の仕方、卵の割り方、バスの乗り降り、水族館の掃除…。
覚えるのがゆっくりなターフーに、ワンは焦りや苛立ちから怒鳴る事もあったが、一つ一つ手取り足取り教えていく。
謙虚で真面目なワンに、周囲は手を差し伸べる。
密かにワンに好意を抱く隣人女性はターフーを引き取ると言う。
ターフーが幼少のお世話になった先生の手配で施設に迎えられる。
人と人の繋がりの温かさに救われる。
泳ぎが得意なターフーは水の中では“水を得た魚”で、非常に生き生きしている。
海や水が効果的に使われ、青を基調とした名手クリストファー・ドイルによる映像が美しい。
久石譲が奏でる音楽も心地良い。
父は逝ったが、父の教えを守り、一人で生きていくターフー。周囲が温かく見守る。
好きな水の中で大好きだった父の温もりを感じるターフーの笑顔には悲しみは微塵も無く、爽やかな感動が胸に染み入る。
遺して死ねない。
名画座にて。
身近な知り合いに自閉症の息子を育てる夫婦がいる。
まだ赤ん坊の頃、我が家の子供と違って全く泣かない
その子に、私は羨望の眼差しを向けたことすらあった。
なんて手のかからないいい子なの、と。
程なくしてその子が自閉症であることが判明し、
それから夫婦は二人三脚で今は高校生の息子を育てている。
今作を観て、あぁ…と思う場面が幾つもあった。
もちろん映画的に脚色され編集され美化はされている、が
自閉症の子供を持つ親が、その子と共に、どういう立場に
於かれているかが(日本と比べても)よく描かれていたと思う。
冒頭で父(J・リー)は、息子とロープで足を結び合い、心中を
図ろうとする。ボートからドブン、と飛び込んだ水の世界は
息子にとっては夢の世界だった。魚に生まれたら良かったのに、
と父親が言うとおり、難なく息子は水面へと顔を出して笑う。
末期の肝臓がんに冒されてしまった父は、余命幾許もない。
この子を遺して死ねない。自分が死んだらこの子はどうなる。
気が狂いそうな思いで受け入れ先を探す父だが、成人した
息子を引き取ってくれる施設は何処にもなかった。泣いても
悩んでもどうにもならないのが、こういった酷い現実である。
ただ今作では、彼らに無数の人々が手を差し伸べている。
温かな眼差しで見守りながらも、やはり問題が起これば手の
施しようがない息子を、父は治療を拒んで再教育し始める。
何とか生きてゆけるように。ひとりで生活していけるように。
こういう親の願いは、どの親とて皆同じだ。
そして、これだけ長い間子供の傍に寄り添って暮らしていても、
子の心親知らず。親の心子知らず。が、まだまだあるわけだ。
ただ悲しいだけでなく、切ないだけでなく、そういった現実を
しっかりと描くことが今作にもある希望に繋がるのではないか。
旅芸人のピエロの女の子に恋をしたり、父親に逢えなくなり
駄々をこねたり、ターフー役ウェン・ジャンの演技には文句の
つけようがないほどである。さらに泳ぎもかなり巧い!
息子のいなくなった部屋にポツンと座るJ・リーの演技を観て、
彼が少林寺より今作を選んだことをブラボー!とすら思った。
二人の演技の密度が濃く、互いの気持ちが深まるほど今作は
通じ合う親子の絆に泣かされることになる。とはいえ、涙を
流せ~と迫りくるわけではない。例えば自分と親に置き換えて
考えるとそこに存在している強固なものに触れた気がするのだ。
妻に先立たれ、自身も病に倒れ、遺るは息子ひとりとなる。
この先、彼は毎日を楽しく生きてくれるだろうか。
海亀と泳ぐことを楽しみに仕事に励んでくれるだろうか。
心配で心配で心配でたまらないけれど、彼を見ているとなぜか
幸せな気持ちになる。本当に生まれてきてくれて有難うと思う。
親ならこうあるべきなのに、私はこの父親のどれだけ分でしか
子供に愛を注げていない気がして恥ずかしい。思うより行動か。
(じゃあ、現金で頼むよ。なんて言われてしまいそうだけど^^;)
そして父親は海亀に・・・
いきなり、心中シーンでびっくりしました。
その後の物語が回想シーンではなくて本当に良かった。
日本でも中国でも自閉症のしぐさは一緒ですね。
取り巻く環境も似たり寄ったり
死が近づく父親の必死さと愛情・・・・・
ウェン・ジャンの演技も
「ぼくはうみがみたくなりました」の伊藤君にまけないくらい
本物そっくりでした。
アジアの映画はほとんどみないんですが
この映画は非常に良い映画だったと思います。
自閉症の子を持つ親としては、非常に切実なお話でした。
相手と戦うのではなく、抱きしめるために拳を使うジェット・リーの優しさが、やわらかい感動を呼ぶ
香港が誇るアクションスター、ジェット・リーが十八番のアクションを一切封印し、命懸けで息子を守る父親を熱演。
父子は水族館の裏方として働いており、海やプール、空などの青さが印象的でキタノブルーを連想させたが、音楽を久石譲が手掛けていたのを知り、直ぐに納得した。
自然美や人情の温かさが際立ち癒やされる一方、障害者を受け入れる環境が整っていない現実の厳しさが露呈し、やるせない気分に襲われる。
偏見や差別。
父親は勿論だが、近所のお節介なオバサンや水族館の上司、施設のスタッフなど周囲の理解だけでは息子の自立は到底、不可能だ。
現代社会をどう克服していくかは、結局、自分自身の力に委ねるしかない。
その苦闘は、障害を持とうが、持つまいが全てのヒトに共通する宿命であると半人前ながらも私は思う。
息子の恋愛めいたエピソードが唐突に始まり、唐突に終わってしまったのは、違和感が有ったが、あのギコちなさが、今作を独特なる御伽噺へ導いたとも云える。
観終えた後、我が身を包んだ優しさみたいなものが、自分の職場でも活かせたらエエなぁ
っとまだまだ半人前の私が思いつつ、最後に短歌を一首。
『独りでも 泳げと託す 親亀の 遺した実り 海に手を振る』
by全竜
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