「ジェット・リーが映画の原点を見せてくれた」海洋天堂 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
ジェット・リーが映画の原点を見せてくれた
久々のアジア映画。もちろん今年はこれが初めて。
注目は、なんといってもアクションを完全封印したジェット・リー。
こんなに優しい目をしていたんだと驚かされる。
自閉症の息子を持つ父親が、周りの人々に助けられながら暮らしている。
せっかく今の中国の一般的な生活を垣間見ることができるのに、機材のせいなのかプリントのせいか映像にまるで色彩感がない。
通りに面したチャイの店と、裏庭を挟んでワンの家がある臨場感や生活感といったものが、色彩の欠如で半減してしまったのがもったいない。水族館も同様だ。しっかり色彩があったら、ワン一家を見守ってくれる人々の温かみがもっと伝わってきただろう。
その裏庭を挟んでのワンとチャイの恋愛感情は、一定の距離を持った抑えたものだが、昔の日本映画もこんなだったよなと、なんか懐かしい思いを抱いて見入る。日本ではいつのまにか西洋文化が入り込み、映画に於ける愛情表現もストレート且つ大胆になって、ワンとチャイがベンチに腰掛けて互いの気持ちを打ち明けるシーンは却って新鮮だ。
ワンが自閉症のターフ-のために残された時間をすべて注ぎ込み、自分がいなくなっても生活できるよう知恵を授けていく姿に、館内のあちこちからすすり泣きが起きる。
さらに、いなくなってしまった自分をターフーが探すことがないよう、先を見越した策を講じる姿に父の息子に対する深い愛情を感じる。
ワンが亡くなったあとのターフ-の行動が感動的。
とくに、最初から出てくる犬のぬいぐるみの扱いがいい。オーソドックスな手法ながら感動と涙を誘う演出だ。
CGもワイヤーアクションもなしで、ジェット・リーが映画の原点を見せてくれる。
ターフーを演じたウェン・ジャンも上手い。