ラビット・ホールのレビュー・感想・評価
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悲しみは無くならないが変化する(セリフから)
製作というのはどんな作業なのかよくわからないが、キッドマンが製作にも関わっているという本作品。
なかなか、だった。
淡々と展開するが、子供を亡くした親の家族、近所の人、職場の同僚、被害者の会(多分)、いろんな立場の人達との関係や感情が複雑に入り乱れる。
会話の端々、目線など、細かいところに気が配られてると思った。
ただ、前情報無しで観たら、もしかしたら最初は理解出来なかったかも。汗
「事故」についてはほとんど映し出されない。
スクールバスに乗っていた男の子を見かけた時も、事故を起こした子だとは…なかなかないシチュエーションだろう。
(セッションであんなに激しいドラムを演じることになるとは想像もつかないマイルズ…モサッとした感じで一見普通過ぎて見過ごそれそうなのだが、何か特別なオーラがあったのだろうね)
公園のベンチに座る2人。
普通は感情的になりそうなものだが…あれだけ旦那さんとギクシャクしているのに、彼とは穏やかな雰囲気で。
そこがちょっと不思議だった。
もっと感情が揺さぶられる気がするけどな。
未成年が起こした事故だから?
原因が飛び出しだったから?
彼が責められるシーンは一切無い。
絵本(コミック本)を届けるためにオープンハウスに来た時の、旦那さんの反応が普通の人のものかなと思う。
卒業式に出かける彼を見かけた後に車の中で激しく泣いていたが、どういう感情の変化だったのか。
あそこでようやく吐き出したことで前に進めるようになったのか。
タイトルにあるラビット・ホール(絵を描いているシーンが好き)を描いていた少年のに事故の影響はあったのか?
気になるどころだが、私にはそれはほとんどないように見えた。
そしてそれが母親の感情を逆撫でするというわけでもなくて。
当事者(子供を亡くした人)以外には時の流れが強く影響するのかもな、と。
パラレルワールドとの結びつけはやや強引で難解な気がしたが、事故で子供を亡くした親の悲しみを丁寧に描いた、いい作品だと思った。
エリック・クラプトンTears in Heavenが頭の中で流れて止まらない…。
ポケットの小石に変わるまで
交通事故で息子を亡くした夫婦。
8ヶ月経っても二人は息子を亡くしたあの日の最中にいる。
愛らしい小さな指紋の跡すら、失神してしまう程の喪失感を伴う。
大火事に巻込まれた重傷患者のように、心の中はけたたましい火傷が巣食う。
毎日毎日、時間をやり過ごすだけで精一杯の日々。
一秒たりとも苦しみは彼らを見逃してくれない。
痛みに麻痺した心は、誰彼かまわず傷つけてしまう。
皮肉なくらいに、彼らを包む太陽や空や花々は優しく温かい。
毎日毎日積み重ね、半年、1年、3年、5年とかけ傷は乾いていく。
彼女の母親も10年前、麻薬中毒で息子を亡くした。
胸を覆いつくす重石がだんだん軽くなり、ポケットに入るまでに小さくなった。
悲しみも痛みも、息子が可愛い笑顔と共に遺してくれたから耐えられる。
加害者の学生を町で見かけて、思わず車で追いかけた。
彼は正直に誠実に事故のことを話し、その瞳は虚ろだった。
当り散らし口論できる家族がいるって安堵感を与えてくれるのだな。
二コール・キッドマンの力強く繊細な演技に揺さぶる力あり。
夫に共感
子供を事故で失った夫婦がそれを乗り越えていく過程を描いた作品。
夫の方は死んだ息子との思い出を大事にしつつも、次の子を作ることも含めて、前向きになろうとしている一方で、妻の方は依然として悲しみに囚われたまま。しかもとても攻撃的。
そういった心境からの克服がテーマであるので、そのあたりの葛藤が延々と描かれている。
妻の気持ちもわかるのだが、やはりその後向きのままの態度には段々イライラしてくる。
夫の方に共感できるのは、やはり自分も男性だからか。
最後のパーティーのシーン、子供のいる普通の光景がこの夫婦が前に踏み出す第一歩。
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