「ゴッサムシティの混乱と幕引きに終始する三作目。」ダークナイト ライジング すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴッサムシティの混乱と幕引きに終始する三作目。
◯作品全体
本作のウィキペディアを読んでいたらノーラン監督が制作前に「皆は映画のシリーズもので出来の良い3作目を思いつきますか?」と話していると書いてあって驚いた。個人的に本作は幕引きの意味しかなしていないように感じて、見せたいものは前二作で終わっているような気がしたから、ノーラン監督自身も制作に不安な船出だったのかな、と思ったりした。
一作目ではブルース・ウェインとゴッサムシティの物語を描き、二作目では正義と悪というバットマンに必ずついて回るテーマが描かれた。三作目はどうするのだろうと思いながら見始めたけれど、大きなテーマ性はあまり感じられず。毎度のように描かれるゴッサムシティの混乱と、ブルース・ウェインの幕引きに終止していたような気がする。
今までは作中一番の強さだったバットマンを軽々と打ち倒すベインやキャットウーマン、ミランダというブルース・ウェインの宿命の相手が登場し、物語に変化はあれど、三作目にして初登場する彼らとの因縁を心の底から楽しめたかというと、微妙だ。ハービーやレイチェルといった、ブルース・ウェインの深く関わる人物たちがいなくなってしまった物足りなさのほうが強い。正直、『ゴッド・ファーザー partⅢ』を見ているような物足りなさが常時あった。
ラストでブルース・ウェインが生き残っていることがわかるが、今まで無謀なことをしてきた人間が崖を登っただけで死への恐怖を持ち、生き延びようとするのだろうか、と思ったりもした。前作ラストからの8年間でブルース・ウェインの心情になにがあって、これからなにをするのか。物語の始まりを『バットマン・ビギンズ』でしっかりと描いた分、終わりへ向かうブルース・ウェインの描き方は少し物足りなかった。
◯カメラワークとか
・これと言って挙げたくなるカットはなかったけど、全体的にスケールの大きいカメラワークとド派手なCGが退屈させない。
◯その他
・本作はゴッサムシティがヤバいっていう部分が物語の多くを占めてるんだけど、ゴッサムシティの人たちは何を思って暮らしているのかが描かれない。ゴッサムシティをフィールドにした「ベイン対バットマン・警察」っていう戦いの構図しかないのが気になった。前二作はバットマンの行動に対して報道が騒ぎ、住民の感情が揺れて、警察や会社のスタンスが動くから「ゴッサムシティ」っていうコミュニティを見ることができてた。今作はそこらへんがないがしろにされてた気がする。悪者として隠れていったバットマンなのに何故か許された感出てるし。地下から警察を救ったシーンとか、バットマンと警察が邂逅するときに一言二言やりとりがあっても良さそうだけど、ゲームのNPCのごとくバットマンの横を無表情で通り過ぎて行く。だから街が単なるフィールドになっちゃってて、複雑に駆け引きしてるようで、やってるのは「ベイン対バットマン・警察」だけのように見えてしまった。