「前作を凌駕してみせたノーラン監督に拍手!!」ダークナイト ライジング マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
前作を凌駕してみせたノーラン監督に拍手!!
165分という長さをまったく感じさせない。
豪華で多彩な俳優陣を無駄なく使い切る脚本と演出が素晴らしい。
ストーリーに秘められた情報をしっかり伝える撮影と編集も文句なし。
前作「ダークナイト」を観ていないとしても、ダークナイト(=バットマン)とゴードン市警本部長が置かれた苦境、そして執事のアルフレッドの主人ウエインに対して抱く危惧が充分に理解できるはずだ。
「ダークナイト」の悪役・ジョーカーは亡くなったヒース・レジャーの鬼気迫る怪演で、作品のレベルを押し上げた。はたして、それを乗り越えられるのだろうか、期待と不安がよぎるが取り越し苦労だった。
今作の悪役・ベインはジョーカーよりも現実的なタイプながら、その異様なマスクと強靭な肉体でダークナイトのハイテク武器が通用しない。肉弾戦でしかケリがつけられない。しかも組織を束ねる統率力と揺るがない精神力を併せ持ち、その圧倒的な強さはジョーカーを凌ぐキャラクターに仕上がっている。クリストファー・ノーラン監督に“限界”という言葉はないのだろうか。
音楽もいい。ノーラン監督と組んだときのハンス・ジマーは別人のようにいい仕事をする。この作曲家は自身が担当したほかの映画の楽曲に似たようなスコアを書くことが多いのだが、「ダークナイト」「インセプション」そして本作の音楽は作品の世界観を作り上げる効果を充分に担い、観る者の心を高揚させる。
アン・ハサウェイのセリーナ・カイル(=キャットウーマン)は、その身体能力に加え知的な優雅さを持ち、そしてなにか暗いものを引きずっている。ブルース・ウェインと同じ血が流れていると感じさせる、今までのキャットウーマンとは違った人物像に作り上げた。
若き熱血警察官・ジョン・ブレイクのジョゼフ・ゴードン=レヴィットが、案外に物語が持つテーマ〈法が足枷になることもある〉の中心的な役割を持つ。
二組のエンディングの処理も、伏線が活きた着地でピタリと決まる。
二組のエンディングは一つの予感に結びつく。だが、ほかの監督によく見られる、せっかく決まったフィニッシュをエンドロール後に遣らずもがなのショートフィルムでお茶を濁すような真似はしない。
最後まで3Dにしなかった硬派の監督ならではだ。