「まだ世の中、こんな汚れなき純愛物語あるんだね」サンザシの樹の下で 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
まだ世の中、こんな汚れなき純愛物語あるんだね
1970年代初頭、文化大革命下の中国。都会育ちの女学生ジンチュウは、再教育の為に派遣された農村で誠実なエリート青年スンと出会う。惹かれ合う二人だったが、それは身分違いの恋だった…。
チャン・イーモウが再び描く、「初恋のきた道」を彷彿させる純愛物語。
「HERO」や「LOVERS」のような華麗な武侠映画もイイが、こういう情感溢れる静かな作品こそイーモウのホームグラウンド。しっとりと作品世界に入って行ける。
若い男女が出会って、惹かれ合って、引き裂かれて…純愛モノの典型的ストーリー。
帰り道そっと手を繋いだり、人目を忍んで会ったり、二人で一つの防寒着を羽織ったり、自転車を二人乗りしたり…こっぱずかし〜!シーンのオンパレード。
でも、日本のベタな純愛モノとはちょっと違うんだな。
日本の純愛モノって、あからさまに涙を誘ったり、こんな純愛してみたいだろ〜?っていう演出が見え見えなんだけど、本作は一つ一つにいやらしさが無い。真摯な心が伝わってくる。
ラブシーンやキスシーンを描かなくたって、ひたむきな恋心を表現出来、だからこそ最後の切なさも一層際立つ。
(無論、ラブシーンもキスシーンも否定する気は毛頭無いが)
この映画の象徴とも言えるのが、ジンチュウを演じたチョウ・ドンユィ。
まだ世の中に、こんなにお下げ髪が似合う純情女の子がいるんだ…と思わせてくれるくらい瑞々しい。
とびっきりの可愛い娘というわけではない。幸薄そうで華奢な体。でも、その健気な普通っぽさがとってもイイ。
清く正しく育って欲しい…なんて、どうしても親目線になっちゃう(笑)
チャン・ツィイーも「初恋のきた道」の時はあんなに可憐だったのに、いつの間にか大富豪と結婚しちゃって、何だか高飛車なイメージになっちゃったからなぁ…。
時代背景は少々呑み込み難いが、今や死語となった汚れなき純愛物語(しかも実話!)に胸満たされる。