「派手なアクションにこだわればこだわるほど、嘘っぽくなる。」ワイルド7 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
派手なアクションにこだわればこだわるほど、嘘っぽくなる。
銃撃戦シーンでおよそ映画・テレビドラマを通じて、記録的な弾数が飛び交う激しいバトルがウリの作品です。特に公道でのカーチェイスやクラッシュシーンは、今までの邦画作品に見られない見せ場。よく警察が許可したものです。配給がワーナーなので、日本人ばかりが出演しているとはいえ、ハリウッド映画の遺伝子を色濃く受け継いでいます。その象徴がワイルド7の司令塔となっているコンボイでしょう。数台が連なる姿は、まるで「トランスフォーマー」のようでした。
、そこに羽住英一郎監督お得意の派手な爆破の演出が絡んで、これまでの邦画作品のスケール感を吹き飛ばす作品となりました。高速道路は建設途中の道路を使用、北九州でのロケでは実際に市街地を貸し切り、空撮も多用するなど、従来スケール感をごまかしてきた部分をブレークスルー。狙い通りのアクションを撮るためならあらゆる手間暇惜しまず挑戦している姿勢は評価できるでしょう。
但し、その結果治安の良い日本で、設定のような警察をも狙うテロが起こり、派手な銃撃戦が起こりえるかという嘘っぽさも感じてしまうところが、本作の設定の諸刃の剣と言うべきですね。
なので突っ込みどころ満載です。
まずワイルド7の存在が上手く説明されていません。なぜ前科者を免罪にしてまで組織したのか。そして彼らによって裁判も経ず処刑されてしまう行為がどうして法治国家であるわが国で黙認されるようになったのか。司令官の草波によってそれなのに語られはするものの、説明不足でしょう。
またワイルド7の敵役となっていくのが、PSU(公安調査庁情報機関)の統括者桐生。だいたいPSUの存在自体が嘘っぽい!あれは『24』のCTUのモノマネではないでしょうか。そして自分たちをはめようとした桐生の陰謀を暴くべくPSUへ乗り込むシーンも、警察側の防御が甘すぎます。ワイルド7も身分上は警察官です。PSUでの派手な銃撃戦は、警官同士が殺しあいをするのです。これもあり得ないなぁと思いました。
全てのシーンで、アメリカだったらあり得るかもしれないが、それをマンマ輸入してきて、強引に日本で『24』のアクションをまんまやったら、嘘くさくなるのは否めないでしょう。
そういう現実離れした設定ながらも、革ジャンを着こなしたメンバーたちが二輪を駆って疾走するシーンは痛快で、かっこ良かったです。
メンバーのなかでも、主役の飛葉大陸役に挑んだ瑛太は、イメチェンに成功していると思います。止むを得ぬ事情で犯罪者となった飛葉の過去を背負ったニヒルで寡黙な雰囲気は、瑛太のこれまでの役柄にはなかったキャラでしょう。瑛太は、本作で高倉健を目指しているのかもしれません。
また警官殺しのセカイ役を演じた椎名桔平も、本作では年齢を感じさせない格好良さを披露。世捨て人のように振る舞いつつも、決して娘への愛情を忘れていない父親ぶりも見せて、感動的な殉職シーンを盛り上げてくれました。
オヤブン役の宇梶剛士の貫禄ぶりも良かったです。そして、草波警視正役の中井貴一も権力の中でしたたかに泳ぐ警察官僚ぶりを発揮してくれました。
逆にダメダメなのが、本間ユキ役の深田恭子。可愛すぎて、復讐に燃え、ため口も聞く男勝りなユキ役に全然似合わないのです。役柄自体、復讐の設定に無理なところがあるので余計に感じてしまいます。本仮屋ユイカが演じた新人記者岩下こずえ役の方が似合っていたのではないでしょうか。こっちは本仮屋が可愛く決めていましたが(^^ゞ
ユキのような役柄は、やっぱりドラマ『ジウ 警視庁特殊犯捜査係』で主演し、好評を博した黒木メイサの十八番でしょうね。
セカイの殉職で、「ワイルド6」になってしまうチーム。但しご心配なく、エンディングロール時に、彼らのバイクの隊列に一台の不審なバイクが併走始めます。不審のバイクも隊列に加わって、なんかいつの間にか元の「ワイルド7」が復元。新しい指令が草波が降って、続編ありありの終わり方でした。とりあえず最後までお見逃しなきように。