劇場公開日 2011年12月21日

「見た目に反して安全運転な大作アクション」ワイルド7 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5見た目に反して安全運転な大作アクション

2011年12月27日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

原作未読。
邦画規格外のハードなアクションを期待させる予告編に惹かれて鑑賞。

期待していたアクションは流石に派手である。そこには特に不満は無い。
バイクの疾走シーンや多くの爆破・銃撃など、
なるほど日本映画らしからぬ派手さとケレン味がある。
しかし……

幕開けの強盗発生→鎮圧シーンまでは確かにワイルドだが、
深田恭子が登場する辺りから(つまりは結構な序盤から)イヤ〜な予感がし始める。
ひょっとしてコレ、あんまりワイルドな映画にならないんじゃない?と。

案の定、瑛太と深田恭子も辛い過去を負った人物にはまるで見えず、
他のワイルド7メンバーは爆弾魔や元組長など相当なワルの集まりなのに、
見た目も言動も、凶悪犯つうより柄の悪い兄ちゃんの集まりにしか思えない。
う〜む、マイルドである。
ハードと思わせて実は、とても口当たりなめらかな映画である。
まあ万人受けする映画を目指すのならこれくらいマイルドなのが無難なんでしょうか。
(このレビューのタイトルも『マイルド7』でいこう!と考えてたが、
seanさんに完ッ全に先を越されてた(爆))

物語もトントン拍子で進む。
……あ、いや、『テンポが良い』という意味じゃなくて。
こっちがアクションに対して緊迫感や興奮を覚える前に、
登場人物に対して感情移入する前に、
サラッと話が進んでしまうという意味だ。

『ブラックサンデー』を彷彿とさせる飛行船での細菌テロとか
難攻不落のセキュリティを誇る要塞への突撃とか
様々な技能に長けた7人が活躍する設定とか
いくらでも面白くなりそうなアイデアまでもあっさり処理。

ツッコミどころも満載だし。
解除コードを簡単に吐くテロリストとか
国の重要施設に突っ込んでくるトラックを誰も本気で止めないとか
ロビーは警備が厳重なのに施設内部は誰もいないとか
物語に都合良く銃弾が当たらない(あるいは当たる)とかとかとかとか。

だが個人的に一番のツッコミどころは吉田鋼太郎演じる桐生。
現代版フーヴァー長官みたいな面白い悪役設定なのに、
途中から水戸黄門の悪代官みたいなウルトラ分かり易い悪党に変身。
3回くらい吹き出しそうになった。
「フッフッフ……」って笑う悪党なんて今時いないよ……。

最後まで眠くはならなかったけれど、
どんなに派手な画を披露しても、情感が宿らなければ無味乾燥。
そんな映画の好例になってしまった感アリ。

<2011/12/24鑑賞>

浮遊きびなご