「お父さんのホームビデオ」ハンナ しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
お父さんのホームビデオ
少女殺戮マシーンものは、少女が有り得ないアクションをし、少女がひどく痛めつけられることに、変態どもはエクスタシーを感じる。
それは少女殺戮マシーンものの絶対条件である。
「キック・アス」で少女がアクションするのがかっこいいといっているヤツのほとんどが、カタキのボスにテーブルにたたきつけられ、ぶん殴られ、少女が鼻血を出して、泣きべそをかくシーンにエクスタシーを感じているだろ?
「キック・アス」の作り手にもそういう欲求があるし、
「見たいやつが見ればいいし、そういうヤツはこういうシーンが好きだろ?」と確信犯的にやっている。
「キック・アス」については正直気持ち悪いが、気分が向いたら書くとしよう
本作が「キック・アス」等と決定的に違うのは、作り手がその少女を性的な対象としているかいないか。それに尽きる。
ジョー・ライト監督は主演女優に対して、性的欲求がない。
監督の主演女優へのまなざしはまさしく父親の我が娘へのそれである。
本作はお父さんの娘のお遊戯会を撮って、お父さんが若いころ大好きだったアーティストの曲を集めてBGMにしたホームビデオのような映画。
その時点で少女殺戮マシーンものとしては失格なのである。
「オレの娘かわいいだろ?」というお父さんのまなざしと少女殺戮マシーンものにはそうした絶対に超えられない壁があり、いろいろ手を尽くして、その壁にチャレンジしているともいえなくは無いが、出来上がった映画はやはりユルいものになってしまっている。
違う女優なら、もっと「性欲」的に撮れたのかもしれない。
しかしそれがオレにとって「面白い映画」とは決してならないがな。
ほかダメな点
・ケミカルブラザーズがものの見事にダサい。
これはまあ、目をつむっても良い。ホームビデオだからね。
・娘が反抗期
主演女優が全然生き生きしていない。どうも娘として撮られるのを拒絶しているようにも思える。
違う監督ならばもっと生き生きした殺戮マシーンだったのかもしれない。
この監督と主演女優がこの題材で映画を撮ってはダメという、とっても分かりやすいケース。案外ケーススタディとして映画の教科書に載るかもしれない。
ということでプラス1点。