「豊かに歳を重ねることを忘れた女」クロエ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
豊かに歳を重ねることを忘れた女
主な登場人物は4人だけ。ストーリーも単純で、どろどろした昼メロのような展開。だが、要所要所で画的なセンスが光る。とくにガラスの使い方が印象的だ。
話の根本は老いによる若さに対する負い目。豊かに歳を重ねることを忘れた女が、若くて美しいクロエに自分の願望を重ねてしまう愚かさ。
夫への猜疑心はみるみる膨れ上がり、精神的にも限界に達したとき、雇ったはずのクロエが逆に己が欲望を曝け出す。クロエのデビッドに対する行動に疑問を感じれば感じるほど、その真の目的がなかなか見えてこないサスペンス仕立ての筋書きが効果的。キーポイントは銀の髪飾り。
老いが見えはじめた手と瑞々しい手が交差するキャサリンとクロエの出会い。まるでクロエはキャサリンの願望を具現化した分身のように現れる。そして、キャサリンが家族の愛を再び感じたとき、分身はガラスのように砕けて消えて行く。ただの愛憎ドラマに終わらなかったのはひとえに女優陣の魅力。
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