「謎解きと活劇で緊張感が途切れない」アンノウン Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
謎解きと活劇で緊張感が途切れない
総合80点 ( ストーリー:80点|キャスト:80点|演出:85点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
事故後の突然の変化に、何がなんだかわからなくなる。特に今まで長年過ごしてきた愛する妻の「あなた誰?」的なあまりの態度の豹変振りには、主人公が狂っているのだろうか、それとも妻はそっくりさんに入れ替わっているのだろうかとか色々と可能性を想像してしまって、それだけでも謎解きに引き込まれた。そのような謎を、やや強引とはいえしっかりと整合性をつけてきてきたのにも納得。
気に入ったのは冷徹で真剣な演出。登場する殺し屋は無駄な会話も動きもせずに、感情も表さずに迅速に仕事を進めてくる。その訓練された職業意識に基づく行動が恐怖と緊張をもたらし、一体主人公は何に巻き込まれてどんな組織に狙われているのだろうかという疑念と興味も湧いてくる。生命の危険を感じる中での主人公の謎解きへの奔走に、観ていてこちらも常に緊張感を途切れることなく持った。そして主人公と殺し屋に加えて、タクシー運転手のジーナとその友人のアフリカ人・旧東ドイツの秘密警察の探偵が存在感を見せていた。
主人公が殺し屋組織の一員で一流どころなのだったら、頭では忘れていても体がそのことを覚えているのだと思うのだが、車の運転以外ではあまりそのような部分が出てこないのはどうなのかなと思った。特に格闘はもっといいところを見せて欲しい。無意識に相手のことを観察し警戒し格闘もしてしまう「ボーン・アイデンティティー」のほうがこの部分では自然だったし上だった。記憶を失ったというのをどう解釈して設定にしていくかというところで、個人の行動上の甘さというか制作側のご都合主義が出ている。彼の記憶が混乱するところでも、かつての自分が出てこなくて、長いことやってきた殺し屋ではなく、教授としての新しい人格が生まれてしまって普通にその人格でいるのにも不自然に感じた。