「ハリス博士の憂鬱ベルリン探訪」アンノウン 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
ハリス博士の憂鬱ベルリン探訪
『96時間』以来、アクション映画への出演が激増したリーアム・ニーソンの主演最新作。
けど今回はアクションは割りと控え目なんで、
『96時間』の再来を期待してた人はちょっと肩透かしを食らったかも?
(中盤のカーチェイスとかはなかなかの迫力だったけど)
しかしながら、しっかりと作り込まれた上質なサスペンススリラーでしたね。
『エエッ、嘘ッ!?』と驚くようなドンデン返しがある訳じゃ無いが、
こんがらがった糸がスルスル綺麗にほどけていくような気持ち良さ。
それにこの手の記憶喪失モノで『やっぱり主人公は善人でした』
というハッピーエンド展開が多い中、
同じ轍は踏まんとばかりにヒネった展開をみせるのも良いすね。
そして素敵な役者陣。
どこかミステリアスな主人公の妻を演じたジャニュアリー・ジョーンズ。
お美しい。
主人公に協力する心優しい不法移民ジーナを演じたダイアン・クルーガー。
やぁお美しい。
彼女は今回好演でした。単なる綺麗なヒロイン
ってだけでなく、健気で愛らしかった。
そして貫禄十分のブルーノ・ガンツとフランク・ランジェラ。
お美し……くは無いが(笑)、映画に良い味が出ましたねぇ。
互いの手の内を知り尽くした古参2人の対決シーンは、
静かな緊張感が漂う見事な出来だった。
主役級やその他脇役も含め、本作には
見応えのある“顔”を持ったステキな役者が揃っている。
寒々とした硬質な美しさを放つ舞台・ベルリンの風景もまた良い。
つまり、何つうかな、この映画は画全体がしっかりしてる。見応えがある。
クラシカルなサスペンス映画のような風格が漂っておる。
けどね、物語として納得できない点がひとつ。
記憶を失って“マーティン・ハリス”という別人格が刷り込まれたとはいえ、
もともと巻き添えをも顧みない暗殺計画を立てた冷酷な殺人者が、
ああもアッサリ「殺人を阻止せねば!」って奮い立つかなあ。
きっと彼が事細かに作り上げた“マーティン・ハリス”は、
心優しい人物という設定だったんだろう。
けどやっぱり、ちょっとしっくりこない。
って訳で今回のスコアは……
むむ、本当は3.75くらいを付けたいんだけど、無いしなあ……
スイマセン、3.5判定で。
冷酷な元の人格と“マーティン・ハリス”が衝突しながら戦う続編が出たら面白そうだな……
と考えちゃったのは『ブラックスワン』を観た後だからかね。
<2011/5/15鑑賞>