「そんな理由で呼ぶ方も呼ぶ方だが、呼ばれた貞子も貞子である」貞子3D 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
そんな理由で呼ぶ方も呼ぶ方だが、呼ばれた貞子も貞子である
予告CMのショボさから、嫌な予感がプンプンしたものの、10数年振りに帰還する貞子の勇姿に出逢うべく、一足遅いゴールデンウイークを利用し、劇場に運ぶ。
しかし、しかし………。
期待はずれの一言やね。
『ラピッドホラー3D』もロクな代物じゃなかったが、今作は輪を掛けて酷い出来だった。
Jホラーの質も此処まで地に落ちたのか…。
シリーズ最低のクオリティやと思う。
随分サビレた大看板になっちまったもんだ。
昔からホラーとコメディは紙一重やというが、なまじ映像だけが進歩すると、必然的に笑いへと傾く運命。
幼稚なストーリーが浮き出て笑わざるを得ないのが実情で、逆手に取った『バタリアン』や『ピラニア3D』は面白かったけど、今回は、悪い意味で笑いの世界に沈没した作品と云えよう。
そもそも冒頭から主人公も警察も呪いの動画を肯定しているのが、全く以て理解不能である。
ハッキリ言ってしまえば、別に遅いかかるのが貞子でなくても良い。
っていうか、ホラー映画というより、ギャグ漫画の領域で、呆れて笑う脱力感に、のしかかられてメガネが重い…。
ビデオからインターネットへと基盤を移し、貞子持ち前の感染力を爆発させるどころか、物語自体に説得力が欠落しているため、貞子の存在価値がどんどんスケールダウンしていくのが哀しい。
要は、貞子が画面から飛び出すシーンを3Dで創ったらオモロいやろってぇ安易な了見でこしらえた、ヤッツケ仕事が見え見えなのだ。
スピンオフの欠片すら皆無で、途中から
『8時だヨ、全員集合』の金田一コントの如く、
「ああ〜〜、石原先生、後ろ!後ろ!!」と、
叫ぶ以外、面白さを見いだす術は不可能に近い。
ネットを利用し、呪いの動画として、暴れまくるスタンスは、原作の“貞子=コンピューターウイルス”論に近付いているとはいえ、全体のショボさは拭えない酷さである。
第一、復活した理由が、カリスマ芸術家を名乗るナルシストにいちゃんがブログを炎上したヤツらへの復讐やってぇんだからラチがあかん。
そんな用件で呼ぶ方も呼ぶ方だが、呼ばれた貞子も貞子やがな…。
忘れられるのがイヤなのは解るが、もう少し仕事選びなはれ…と、ボヤケた井戸を見下ろしながら思った。
では、最後に短歌を一首
『網招く 這い上がる空 濁る窓 器に疼く ノイズの叫び』
by全竜