劇場公開日 2011年4月2日

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「トイレなきマンション」100,000年後の安全 pignonさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5トイレなきマンション

2011年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

フィンランドに建設される世界初の高レベル放射性廃棄物の永久処分場。

マイケルマドセン監督が関係者に話を聞きながら論点ごとに話は進んでいく。

核の平和利用で語るべき問題は二つに分けられる。
これから利用していくのかという核利用の問題と、既に使用した放射性廃棄物の処理をどうするのかという核廃棄物処理の問題。

この映画で語られているのは後者の問題。

映画でも言われているがこの二つは別に議論しなければいけない。
なぜなら、放射性廃棄物は、無害になるのに10万年かかる我々の排泄物は、原発を止めようとも、既に日本も含め世界中で「現に」存在するのだから。

後者の問題について、おそらく世界的にこれから進む道の最前線であるフィンランドの方法、「地層処分」の現実がこの映画にはおさめられている。

この映画を見てどう感じるかは見た人次第だ。
もちろん監督のバイアスがあるだろうし、絶対的に鵜呑みにしろという気はない。

ただ考えるきっかけにしてほしい。

「10万年後」

この途方もない数字を考えると、はたして核の安全利用というものが可能なのか?

もちろん、ずっと先のことだから知らない、というのも一つの意見だろう。
だとすれば将来の人間にも負担を強いることを宣言するべきだろう。
何かその点をうやむやにしている気がしてならない。

とにかく現に我々の生活のために放射性廃棄物が存在しており、その危険と闘いながらその処理にあたっている人がいることを思い知るために、恩恵を受けている者としてこの映画は見るべきだろう。
今回日本で震災が起きようと起きまいと考えるべき問題であったのを無関心に六ヶ所村等に押し付けてきたのだから。

個人的には、後者の問題については科学技術が進まない限り現在の方法しかないと思う。
将来にわたって絶対安全はないから現在の方法で、将来掘り起こされないよう祈るしかない。
だからこそ、前者の問題については、はやく原発を止めて持続可能な自然エネルギーに移行すべきだと思う。

将来の人間に、現代の人間は誇りを持てるか。

これがこの映画において一番のメッセージである。

pignon