「親の責任って。」莫逆家族 バクギャクファミーリア ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
親の責任って。
原作はもちろん知らなかった。が、劇場の試し読み冊子は読んだ。
でもここに記されていたのは横田(阿部サダヲ)の家庭エピソードで
ほんわかとしていて笑える話。
あら~^^;ぜんぜん違うじゃないの、この映画本編とは。
暴力…といっても、最近よく観かける殺人ゲームなどではなくて、
昔のヤクザ映画のような古臭いイメージの暴走劇が描かれている。
ちょうど私世代の暴走族の風貌^^;なので懐かしい画面ではあった。
いや~しかし、ケンカケンカ、血みどろの抗争と暴走。
この監督(熊切和嘉)ならではの暴力描写大連発といった感じで、
まぁデートムービーには(観ないと思うけど)やめといた方が良さそう。
でも当時の不良ってこんなもんだったんじゃないの、という暴走ぶり
なので(すぐカッターナイフ出すし)昨今の恐ろしい映像を観るよりは
ヘンな感想にはなるけど^^;まだ親近感があるというか、そんな感じ。
皆頭悪そうだったし(失礼)、唯一の砦が疑似家族の絆ってのがいい。
ただもうちょっと、ドラマ(脚本)に力入れても良かったんじゃないの?
というくらい、映像と中身のアンバランスが著しい。
ただでさえ傍観するしかない観客を、置いてきぼりにしてガンガン
話を進めていって、おざなりに過去を挿入してくるんだけど、へっ?
と思うほど分かり辛い。そもそも真っ暗な現場でケンカ抗争している
連中の血みどろの顔なんか見分けもつかない、誰がどうなったのか、
そこから今の関係性を読みとるしかないのに、あれじゃあ分からん^^;
スコーン!と子供時代に話が飛んだりするけれど、これも唐突すぎ。
この人誰!?と思うくらい堂に入っていたのが渡辺役の中村達也。
いや~怖かった、ナニあの顔。こんな俳優さんいたっけ?と思ったら
ミュージシャンだったのねぇ。俳優もやってるみたいだけど。怖ぇぇ~
あの顔でスゴまれたから^^;主人公の徳井なんて(ゴメンね)まだまだ…
まぁ普通に見てもお坊ちゃん顔だと私は思うんだけど、イケメンだから
それなりに似合ってる。でも、風格というか脇の俳優たちの凄味には
大敗している^^;まぁ仕方ないか。お父ちゃんとしての強さと包容力を
発揮し始めて以降、どんどんいい顔になっていくんだけど…。
原作そのものは(おそらく)いい話なんだと思う。
圧倒的に暴力シーンに負けてしまう話の骨子が、もっと描き込まれて
いれば、傑作になったかもしれないのに…と思うと勿体ない話だが、
親に遺棄されるなんてあり得ない不幸な話が、こうして大人になっても
消えない心傷を生んでしまうあたり、どうしてそんな責任も果たせない
親が子供作ってんだ、バカヤロー。と言いたくなる問題意識が広がる。
が。だからなんだよ!と云わんばかりに生活を築こうともがく面々に、
アンタらの子供達は皆まっすぐに親を見ているじゃないのよ、と思う。
男子が抱える父親への想いは尊大だ。
ぼやけた観覧車がハッキリと輪郭を示した時、あぁそうだったのかと
思ったら安心したかのように、心の中に熱いものが込み上げてきた。
(しかし五十嵐のあの白塗り姿に、違うエンタメを連想してしまったぞ)