「度量の大きさを問う作品。」マイウェイ 12,000キロの真実 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
度量の大きさを問う作品。
タイトルに「真実」と書かれているため、今作の総てが実話だと
勘違いしてしまう人もいる気がするが、ほとんどがフィクション。
ノルマンディー上陸作戦で捕らえられたドイツ兵の中に東洋人が
存在し(チラシに写真あり)、その兵士が日本、ソ連、ドイツの
軍服を着て戦い抜き、ノルマンディーまで辿り着いたと証言した。
その記録に着想を得た監督が描きだす壮大な戦争スペクタクル。
特にノルマンディー上陸作戦の映像はアジア映画?と思うほどの
スケール感で描かれているので一見の価値アリ。
韓国映画ということから当時の戦争ならば明らかに反日思想が
根強く描かれており(これは当然だろうが)主演のJ・ドンゴン以外
皆が悪人に感じられる。オダジョー、山本太郎は、よくぞこの役を
引き受けた、勢いのあるキレっぷりで見事に期待に応えている。
もともと日本のお坊っちゃまと朝鮮の使用人が仲よしこよしなんて
あり得ないだろうと思っていたので、さすがに冒頭から胸が痛んだ。
「走る」ことが生き甲斐で、得意だった二人が、オリンピック出場を
果たせずしてどんどん戦争の波にのまれていく過程があまりに辛い。
そういえばここでも真実が少し描かれていた。
ベルリンオリンピックで、初めてアジアのマラソン選手が金メダルを
獲得したが、彼は日本統治時代の朝鮮半島出身ソン・ギジョン選手、
表彰台で「君が代」を聴かされ、涙を流して抗議した逸話を持っている。
のちにマラソン発展と日韓友好の懸け橋に尽力した彼だが、この時の
ことは一生忘れなかっただろう。
オリンピックはスポーツの祭典というが国家権力の行使にも使われる。
さて冒頭から嫌な奴を演じたオダジョー(子供の頃から憎々しい)だが、
細々しい身体でかなりの貫録を醸している^^;
ドンゴンが筋骨隆々な肉体なのに、走るのが早いのか?と思う一方で
何処ででも真摯に走る姿には感動できる。
二人の熱演に脇も身震いするほど凄味のある演技を見せているが、
シベリアのシーンでは私も凍傷になるんじゃないかと思えるほどだった。
しかしドラマ部分はかなり韓国映画。在り来たりの演出が多く、長い。
ラストシーンが冒頭のシーンと重なり、あぁこれは…と思うところで
感動するのだが、ここで日韓の友好を繋げた勇気が監督の大きさか。
今さら過去を嘆いてもこれからの未来は見えてこない。
最近の韓流ブームを見ていると(言い方が悪くて申し訳ないですが^^;)
実に明るく友好的に日本に復讐しているような気がしてならない私。
ここまで日本人を虜にし、歌にドラマに活躍、稼いで稼いで稼ぎまくる。
今や韓流なくしてエンタメは語れず、ここまで愛を持って踏み込んでくる
韓国のアーティスト達を温かく歓迎する日本人の度量を示すなら、今。
タレントが文句言って、干されてる場合じゃないぞ(爆)
ドンゴンの演じたキム・ジュンシクの精神は、そこなんだろうと思った。
(恨み辛みは計り知れないが、人生の歓びはもっと計り知れないもの)