「その希望を、死なせるな」マイウェイ 12,000キロの真実 カバンさんの映画レビュー(感想・評価)
その希望を、死なせるな
韓国映画は大好きで、頻繁にDVDを借りたり、ネットでチェックしたりしています。だから、この映画の存在は1年以上前から知っていました。
中でも特に好きな作品は「ブラザーフッド」で、その監督の新作ということもあり、結果、期待を超える内容でとても感動しました。5.0でも足りないくらいです。
「ブラザーフッド」よりも割増でハードな印象で、観る側も体力が要ります。しかし、表面的なアクションだけにとらわれず、主人公の辰雄とジュンシク、それぞれの心情を読み解ければ、きっと見方も変わります。
互いに高め合うライバルとして出会った辰雄とジュンシク。しかし、ある事件から決別します。
マラソン選手の夢を捨て、国を守るべく戦争に魂を込める辰雄。どんな状況でも希望を失わず、走り続けるジュンシク。
再会した2人のかつてのライバル心は憎悪に、殺しても殺し足りない程の激情を抱く。殺し合う寸前、それでもジュンシクが辰雄を殺すことを踏みとどまったのは何故か?
最後まで明言はしていませんが、きっと、ジュンシクにとって辰雄は、初めて対等に競争できる相手で、希望を持つきっかけだったからだと思います。辰雄を殺せば、自分の希望も同時に死に絶えていたと思います。
やがて、辰雄の心境が変化しますが、再び運命に引き裂かれて長い時を経ます。それは、憎しみが恋しさに変わるには充分な時間かもしれません。
そして、この先は……、悲しい友情の結末があります。最初の最初、ネタばらしのようなシーンがありますが、ラストで良い意味で裏切られます。本気で泣きました。
本作で、戦争による人格の変化を最も象徴しているのは、ジュンシクの仲間のジョンデだったと思います。心優しかった兵士が、名前を捨て、魂を売り、保身のために仲間も売る。日本人と立場が逆転すると、これまでの恨みを晴らすように、冷酷非情に虐げる。それでも、死に際でかつてのジョンデに戻る姿はとても悲しかったです。
PG12指定(やや有害物)を受けたのは複雑な気持ちです。確かに、この映画の大部分が戦闘シーンか殴り合いで、暴力描写が随所に見られます。しかし、個人の意見として、戦争映画はどんな世代にも観てほしいと思います。
我々の先祖が国のためという大義のもと、如何に残虐な行為に及んだか。ほとばしる鮮血、肉体を打ち据える音、すべて目を背けずに知ってほしいです。
戦争をして無傷の人はいません。