「現実的な描写とハイテンションな映像が面白い悪魔祓いホラー」ザ・ライト エクソシストの真実 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
現実的な描写とハイテンションな映像が面白い悪魔祓いホラー
いつかのレビューでも書いたかもだが、僕は無信心な人間である。
『この世には人間では計り知れない巨大な自然の摂理が存在する』
という事に関しては信じない訳でも無いが、
それが“神”という人格を持った存在だとはこれっぽっちも思わない。
“最後の審判”が本当に行われるなら、真っ先に地獄行き決定ですね。
この映画の導入部は、そんな宗教的(正確にはカトリック的)フトドキモノも話に入り易い。
神学校の生徒が残虐描写満載のTVゲームに興じるシーンがあったり、
お堅いイメージの強い神父が「神学校を辞めるなら奨学金返せ」
みたいな脅迫まがいのことを言ったり、
映画の教徒達からは“宗教”という言葉の持つ堅苦しい印象を殆んど受けない。
またエクソシズムに関しても、『悪魔憑きか精神疾患か』という視点を提示したり、
オカルト的表現が(初めは)控えめだったりと、
映画やTVなどの影響で植え付けられたエクソシズムの大袈裟なイメージを
少しでも払拭しようという狙いが窺える。
主人公が最初の悪魔祓いの儀式を見た後のシーンで、アンソニー・ホプキンスのこんな台詞に笑ってしまった。
「首が回転したり緑のゲロを吐くのを期待してたかね?」
だがその姿勢も前半まで。
いよいよ主人公の身辺で怪奇現象が起こり始めると、オカルト表現もどんどん派手に。
画作りに気合が入っているのでこれが結構怖い。
特に“赤眼のロバ”が出現する辺りの場面は、めくるめく悪夢的雰囲気が実に良い。
画ヅラとして地味になりそうなクライマックスの悪魔との対話も、
極端なクローズアップやフラッシュバックを多用したハイテンションな映像で引っ張る。
けどね、前半が結構リアリティを感じさせる内容なだけに、どんどん派手で現実離れ
してゆく展開に「結局そうなるんかいッ!」とツッコミたくもなるんですね。
特に、サー・アンソニー・ホプキンス様の表情にVFXは不要。
彼の見事な表情はVFXを加えなくても十二分に怖いのである。
てか、VFXが加わらない時の方が怖いのである。
宗教色が若干濃く、PR的な意図も見え隠れしている感もある本作だが、
これを観て神や悪魔を信じる気になる無神論者はまあ少ないだろう。
事実なんて、その人の視点で幾らでも姿を変えるものだし。
とはいえ現実的描写とハイテンションな映像によって、
割と怖くて楽しめるホラーには仕上がっている。観て損はナシ、かな。
<2011/4/9鑑賞>