「【”君の写真は被写体をあったかく包んでいる。まるで公園みたいだ。と男は僕に言った。”今作は、写真家を目指す青年と周囲の心優しき人達との関係性の変遷を優しき視点で描いた作品である。】」東京公園 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”君の写真は被写体をあったかく包んでいる。まるで公園みたいだ。と男は僕に言った。”今作は、写真家を目指す青年と周囲の心優しき人達との関係性の変遷を優しき視点で描いた作品である。】
ー 今作は、 小路幸也氏の同名小説を基にしている。私は、氏の小説の中でも年に一度、春に出版される「東京バンドワゴン」シリーズが好きで、もう10数年読み続けている。
今作は、「東京バンドワゴン」のようなホームドラマではないが、それに近い人間の温もりが伝わって来るような、静謐な作品であると思う。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作はどの登場人物も魅力的であるが、矢張り主人公のコウジを演じた三浦春馬さんの魅力が、作品に温かさと静謐さと気品を齎していると思う。
・一人暮らしのコウジだけには、友人だった幽霊のヒロ(染谷将太)が見え、ヒロの彼女だったトミナガ(榮倉奈々)が、彼の部屋に頻繁に訪れる。おでんなどを持って。
・コウジには義理の姉ミサキ(小西真奈美)がいて、彼は彼女が少し気になっている。彼女も同じ気持ちのようだ。
■コウジが、いつものように公園で写真を撮っていると、マツシタタカシと言う男から、いつも公園を小さな子を乳母車に乗せて歩いている美しい女性(井川遥)を密かに撮ってくれ、と頼まれる。彼は、歯科医だと名刺を出すが、コウジは最初はその申し出を断るが、渋々引き受ける。
・コウジに対し、ミサキは一度だけ口づけをする。この映画の中には美しいシーンが多数有るが、このシーンもその一つである。そして、ミサキは再び義理の姉の口調に戻るのである。
・マツシタタカシがコウジに撮影を頼んだ女性は、彼の妻である事が徐々に分かる。マツシタタカシは、妻の浮気を疑っていたのだが、妻はマツシタタカシとの出会いのきっかけになったアンモナイトの軌道のように、公園を散歩していたのである。
・ある日、トミナガは泣きながらコウジの家にやって来て、一緒に暮らしたいという。コウジはそれを受け入れる。ヒロの姿はもう、見えない。
<今作は、カメラマンを目指す青年の周囲の人と、青年との関係性の変遷を優しい視点で描いた作品である。
特別に、大きな出来事が起こる訳ではないが、優しい気持ちで鑑賞出来る映画である。このような映画は、ナカナカ商業ベースでは厳しいのかもしれないがその土俵で勝負したのが、残念ながら早逝された青山真治と言う監督なのである。>