「津軽そばをもっと。」津軽百年食堂 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
津軽そばをもっと。
名画座にて。
公開時に観たいなぁーと思っていた作品だった。が、
主演の二人がオリラジというのが、ちょっと鬼門だった^^;
せっかくの題材、俳優を使わなくていいのか?と思ったのだ。
予感は的中!?
良い悪いの問題でなく、どこをとっても中途半端なのである。
でもこれは二人だけの問題でなく、映画全体の構成が悪い。。
なぜこの食堂の話だけに絞って描かれなかったのだろう?
原作は分からないのだが、この食堂が百年食堂として四代続く
ことになる壮大な父子の話を、なんでこんなにゴチャゴチャと
他の話を絡ませ、織り交ぜ、テンコ盛りにしちゃったんだろうか。
とてつもなく勿体ない、せっかくの期待が出汁と流れてしまった。
現在を生きるのちの四代目(藤森)と初代(中田)の生き様が行き来
する冒頭の展開、分かり辛い描写や方言が多く、しかしながらその
風情は大切に描かれていると感じた。どんなに継ぎたくても先代が
認めてくれなければ(こういう展開は好き)、というジレンマと葛藤、
それが先代の思わぬ事故で店の存続危機を迎え、いよいよ息子の
お出まし!となるのだったが。。
頑固一徹な父・伊武雅刀がとてもいい。それだけに勿体ないのが
そば打ちや出汁へのこだわりなど、津軽そばにまつわるシーンが
あまりにも少なすぎること。なにを、どう、こだわっているのかが
全くこちら側に伝わってこないため、のちに息子の食堂に訪れた
東京からの客の暴言「こんなの、東京じゃ蕎麦とは言わねえよ!」に
対抗する息子とその友人の啖呵が、こちらの共感に繋がらないのだ。
そんなに自慢の蕎麦なら、もっとビシッと魅せてくれよ!というのが
津軽そばをまったく食べたことのない私が期待した最たるものになる。
もちろん鑑賞後に無性に蕎麦は食べたくなる。でも、食べるんなら
なにがなんでも津軽そば!!っていうところまでもっていって欲しい。
映画って、そういうものじゃないだろうか。
脇を飾るエピソードや、福田沙紀の演技は決して悪くない。
感動できるものもあるのだが、でもこの映画には蛇足に思えてくる。
先代から続く父と息子の一生懸命を主軸に、周囲の応援や協力を
添える描き方でじっくりと観てみたかった。あわよくば初代ももっと。
亡くなった祖母が想い遺したもの。その深さには感動できるのだから。
余談になるが、藤森の兄はイタリアンシェフなのらしい。
タモリ倶楽部でそう言っていた。彼も料理には興味があるようで、
普段お笑いで見せるチャラいイメージとはまったく違う印象を持った。
タモリは名シェフですから^^;その業を盗んで成長して下さいませ。
(興収の一部は震災復興にまわるのだそう。名画座ではダメかなぁ…)