「『働かざる者、喰うべからず』は人間らしさの始発駅みたいなもの」人生、ここにあり! 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
『働かざる者、喰うべからず』は人間らしさの始発駅みたいなもの
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精神病患者の就職という深刻な課題をユーモアたっぷりに交えて重さを排除した今作は貴重な世界観と云えよう。
実話がベースなだけあって、事業の立ち上げから運営、対立、トラブルetc.展開が緻密にかつ、痛快に進み、ちょうど良い案配の人間讃歌を奏でている。
ファンタジー色の強い『八日目』よりビターやけど、ジャック・ニコルソンの『カッコーの巣の上で』よりは甘い、中間層の味付けっていうのかな?
仲間の若い職人が色恋沙汰の果てに自殺してしまうのは『カッコーの…』を彷彿とする苦味を漂わせ、社会の厳しさを痛感させる。
だが、オネエちゃんとオイタするスケベな了見や、差別者に怯まず皮肉めいたやり取りで応酬する毒っ気満載なポジティブ思考は、イタリアならではの突破口なのかもしれない。
ある意味、偉大なる先駆者フェリーニの『道』への回答とも云える。
精神病の知識なぞ全くのゼロのまま、業界に飛び込み、七転八倒する主人公の奮闘は、いつの間にか老人介護の業界に就いた自分に重ね合わせ、観入ってしまった。
入居者のお年寄りには精神の病を患った方々がとても多く、未だにコミュニケーションに苦労するからだ。
夜寝ないでずっと廊下を徘徊しまくるのなんざぁまだまだ序の口で、中には隠し持ってたハサミでリストカットするお婆さんに出くわし、深夜に大パニックとなった先輩もいる。
今作で「働かざる物、喰うべからず」の下、取り得を手中に生き甲斐を持つ喜ぶ仲間達の明るさは、自分のこれからのヒントに少しでも成れたら良いなと思う。
では最後に短歌を一首
『行き場無き 廃材集め ハメるドア 稼ぐ腕前 現場でイカせ』
by全竜
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