「多分、私が愚かなのでしょう」さや侍 ハーヴェイさんの映画レビュー(感想・評価)
多分、私が愚かなのでしょう
誰かの注目作の欄には、『これ観て面白くないと思う奴は映画観賞の趣味はやめろ』みたいな事も書いてありましたので…私は映画を観ちゃいけない事になってしまいました。とても残念です。だけど、この映画の良さが理解出来ない私が愚かなのでしょうね。
私はこの映画を観て、主人公の身勝手さに呆れてしまいました。怒りさえ覚えました。
私がこの映画を観て流した涙は、亡くなった主人公の奥さんの無念(可愛い娘を残して先立たなければならない無念や主人公と同じ墓にも入れて貰えない無念)さに対してのモノだけです。
主人公は妻に先立たれた事を理由に刀を抜いて、鞘に収めようとしなくなります。仕事サボって逃げてばかりの毎日になります。娘がいるのに、です。鞘は侍への未練でしょうか? プライドなんか捨てて、娘の為に働こうとするのが普通の父親の責任だと思いますが、主人公はただ逃げるばかりです。凡人の私には理解出来ません。
遂には刺客に襲われる度に娘に助けて貰います。この娘への甘えは、主人公が捕まった後更にエスカレートしていきます。そして、その甘えはいつしか周囲の者や仕掛けの為に使われたであろう税金にまで広がっていきます。
そこまでして苦行を続けるという事は、生への執念という事でしょう。死にたいのなら、さっさとギブアップして切腹すればいいのに、そうせずに笑いの為に大掛りな装置を他人の金で他人に作らせて、結局は笑わせるという目的を真っ当出来ずにただズルズルと日々を過ごします。
この主人公は、全く成長しません。死にたくないのなら最初から逃げずに働けばいいだけです。それをせずに、娘や周りに甘え続けるだけの奴に同情出来るわけありません。。
そして、ラスト…この映画を観た多くの方を涙させたクライマックスで、主人公はまた逃げます。娘を残して。『あの世で妻と仲良く暮らしてるから心配するな』と娘の養育を放棄して、人生からも逃げてしまいます。取り残された娘はどうしたらいいのですか?
私は恐ろしくなりました。
ここまで身勝手な親がいる事に。ここまで身勝手な親を見て感動の涙を流してしまう観客がいる事に。